最新記事一覧

  • 声が出しにくくなった!原因を探る

    当スタジオには歌が上手になりたいと言う方の他に「以前出ていた歌声や芝居で使っていた声を取り戻したい」と言う目的でボイストレーニングにお越しになる方も多くいらっしゃります。 主な症状はこちらです ・高音が出しづらくなった ・裏声が出しづらくなった ・声が詰まるように感じるようになった ・声がかすれるようになった ・声割れが起こるようになった 等です。 ボイストレーナーがトレーニングを行うのは、病理性がない、もしくは医師が話声を超えるトレーニングを許可した場合になります。 病理性の疑われる場合は、まず医師の診察をお勧めします。 東京都内でしたら音声外来の医師とも繋がりがありますので、ご連絡いただければ紹介させていただきます。 機能性発声障害とは これらの症状は機能性発声障害と呼ばれる事もあり、特にプロフェッショナル・ボイスユーザーを悩ませる症状です。 機能性発声障害は「音声に異常を認めるにもかかわらず、声帯に原因となる器質的異常を認めないもの」と定義されます。 前にも述べていますが、この診断を受けた場合、まずは医師の指示にしたがって治療や言語聴覚… 続きはこちら≫

  • 「強い息」は高い声のトレーニングの手助けになるのか?

    「高い声は息の力で出すんだよ!」と言うのは僕も子供時代の音楽の授業で言われた事がありましたが果たしてそうなのでしょうか? 未だにこの様な指導されているボイストレーナーは少なくないと思います。 今回は科学的に「強い息」は高音発声の手助けになるのか?を検証してみようと思います。 肺圧で高音って出せるの? ここに肺圧と声帯の長さと基本周波数(ピッチ)の関係性を表した表があります。 縦軸が基本周波数。横軸が肺圧(息の力)。 そして各声帯の長さ(センチメートル)毎に出る基本周波数を線で表現しています。 この図で見ると非常に興味深い事が見えてきます。 0.5cmの声帯では肺からの圧で約75Hz(E♭2)から最大220Hz(A3)程度まで上昇出来る事がわかります。 それに対して1.2cmの声帯は肺からの強い圧を与えても約225Hz(A3)からほぼ変化しない事がわかります! 声帯が伸びていない低音では肺圧の影響を大きく受ける さきほどの表では声帯が伸びていない、声帯が短い低音では肺圧の影響を音程が受けやすい事がわかります。 なぜこの様な事が起きるのでしょ… 続きはこちら≫

  • 地声の時、音程はどうやって作ってるの?

    前回の話しでは裏声で靱帯の層を振動させて音程を作る方法を解説しました。 今回は地声の発声時にどのように音程を作っているのかを解説します。 前回のおさらいとして音程を作る際、声帯は弦とバネの特性を持つことを確認しましょう。 声帯のバネの特性で基本周波数(ピッチ)を考えると、、、 剛性(かたさ)が強ければ音程は高くなる。 質量が高ければ音程は低くなる。 声帯の弦の特性で基本周波数(ピッチ)を考えると、、、 長さが短ければ音程は低くなる。長い声帯の男声は音程が低いと言う事ですね。 ストレスがストレスが高ければ高くなる。 密度が高ければ弾くなる。 声帯の特性について詳しくは前回のブログをご覧下さい。 ここから地声の音程生成のお話し 地声と裏声の発声を考えるのにあたり、声帯を2つのグループに分けます。 カバー(上皮+靱帯) ストレスは受動的で主に輪状甲状筋から受けると考えられる。靱帯は自ら縮む事が出来ないため。 カバーのみの発声は裏声に使われる。 ボディ(甲状披裂筋) 甲状披裂筋は声帯内部に走る筋肉で自ら縮む事が出来る。従って自らストレスを声… 続きはこちら≫

  • 裏声ではどうやって音程を作っているの?

    前回のお話しで声帯に掛かるストレスは靱帯と筋肉の両側に加わる事まで解説しました。 では基本周波数(ピッチ)を発声するために声帯ではどのような事が行われているのでしょうか? 声帯は弦とバネの特性を持つ 声帯は弦の特性を持つと言われてきましたが、声帯の振動をモデリングする際、バネの特性も理解する必要があります。 声帯のバネの特性で基本周波数(ピッチ)を考えると 剛性(かたさ)が強ければ音程は高くなる。 質量が多ければ音程は低くなる。 重いと振動が遅くなると言う事です。 これは理解しやすいですね 声帯の弦の特性で基本周波数(ピッチ)を考えると 長さが長ければ、音程は低くなる。長い声帯の男声は音程が低いと言う事ですね。 ストレスが高ければ音程は高くなる。 密度が高ければ音程は低くなる。 注意ポイントは長さ(L)×2になっている事です。長さと言うのは音程に非常に大きな影響を及ぼします。 それを超えるストレスを声帯に加える必要があるため、高音発声時には声帯に与える緊張は非常に高い必要があると言う事です。 声帯の物理的な変化と音程の変化… 続きはこちら≫

  • 声帯の「部位毎に」特性が違う!?

    声帯にはおおまかに粘膜、靱帯、筋肉の層があります。 この3層のどこを振動体とするのか?で発声出来る限界の高音は変わります。 このグラフは声帯の粘膜、靱帯、筋肉のそれぞれに分け、声帯を引っ張るためにどれだけのストレスが必要なのかを計算したモデルになります。 左側の線から粘膜、靱帯、筋肉です。 このグラフから読み取れるのは下記の通りです。 声帯の伸び方は一定ではない 縦軸がストレスの度合い。横軸が何パーセント声帯の部位が引き延ばされたかを表しています。 1つの例としてグラフの右側の点線、筋肉の層を観ると、 15%声帯の筋肉層を伸張させるのに、約2kPa程度のストレスが必要。 30%声帯の筋肉層を伸張させるのに、約10kPa程度のストレスが必要。 長さを15%変えるのと、30%変えるのでは実に5倍の力が必要と言う事になります。 つまり声帯を引き延ばせば引き延ばすほど声帯は硬くなり、さらに引き延ばすが大変になると言う事です。 高音になれば、少し音程を上げるのにも大きな労力がいると言う意味では体感的にも一致するのではないでしょうか? ここ… 続きはこちら≫

  • 輪状甲状筋と甲状披裂筋って「どちらが強い」?

    声に置いてどのような仕組みで音の高さを生成しているのかを考えます。 声の高さの生成は一般的な認識よりも複雑な仕組みをしています。 声帯でどのように音程をコントロールしているのか? 主に2つの要素でコントロールをしています。 1 声帯の長さを変える 2 声帯にかけるストレスを変える。(ストレスを加えると硬化します) ではどのように長さとストレスを変えるのか? 甲状披裂筋(TA)の活動。 活動すると声帯は縮みます。声帯のストレスは高くなります。 甲状披裂筋は声帯の内側に走っています。 輪状甲状筋(CT)の活動。 活動するとと声帯は伸びます。声帯のストレスは高くなります。 呼気圧を高める。 呼気圧を高めると動的なストレスが声帯に加わります。 喉頭モデル 輪状甲状筋(CT)と輪状甲状筋(CT)の活動の関係性 輪状甲状筋は垂部(CT1)と斜部(CT2)左右対にになっています このモデルは喉頭を左側から見た状態です。 こちらのCTとTAのモデルを観ると、垂部(CT1)は縦方向への力。斜部(CT2)は斜め下方向への力を担っています。… 続きはこちら≫

  • 「ベルディングの女王」 イディナ・メンゼルの技術を徹底解説

    今回はベルティングの女王とも呼ばれるイディナ・メンゼルを解析していきます。 「Defying Gravity」のライブの動画を使っていきます。 これはイディナ・メンゼルが「Wicked」の中でエルファバとして演じているものではなく、ソロアーティストとして歌っているものです。 ですので、微妙に歌い回しが違ったりするので、そこも踏まえてお届けします。 実際、どれくらいの頻度でベルティングを使っているのか?どういう作戦で歌っているのか?というのも面白いと思いますので歌い方と合わせてベルティングについても解説していきます。 動画で挙げたポイントは下記の通り ・歌い始めは伴奏はピアノのみでフリーテンポ。 ・「2note trill down」を使ったりして微妙にフレージングを変えている。ポップスやソウル系のシンガーがやるようなフレーズの作り方などもしていて彼女の音楽能力の高さが見える。 ・バンドインしてからも「8分系のシンコペーション」「3連符系のフレージング」などを使い、メロディにブレーキやフックをけたりして劇場版のフレージングから変えている。 ・… 続きはこちら≫

  • ヒアルロン酸の経口摂取は喉や声帯の加湿に有効か?

    キユーピー株式会社が2021年6月に「国際ヒアルロン酸学会」で発表した研究では、 経口摂取したヒアルロン酸が大腸の腸内細菌によって分解、吸収されて皮膚で作用する仕組みを解明したとの事です。 この研究で発表された概要は以下の通りです。 ・この研究では口からヒアルロン酸を摂取する際、胃液や腸液では分解されず、大腸の腸内細菌によって分解される事が確認された。 ・分解された低分子ヒアルロン酸が吸収されて皮膚に到達することが明らかになった。 ・三次元皮膚モデルを用いた試験で、コラーゲン代謝(真皮におけるコラーゲン分解と合成)を活性化することも分かりました。 この研究からプロ・ボイスユーザー達へ考えられる恩恵 口から摂取したヒアルロン酸が皮膚に到達しているのであれば、ヒアルロン酸が声帯に到達する可能性は高いのではないかと考えられます。 また体内のコラーゲン代謝が高まるのあれば、声帯の靱帯層の健全な状態の維持が期待出来るのではないかと考えられます。 声帯の最も外側にある上皮層(epithelium)はヒアルロン酸が主成分。 声帯の中間層にある靭帯層(ligaments… 続きはこちら≫

  • 女声の2つのミックスボイス。それぞれのトレーニング法とは?

    女声でよく使われる地声と裏声の中間のような声、いわゆるミックスボイスは大きく分けて2通りありそうです。 その各種発声法の違いから、より力強い発声を習得するための方法を考えてみます。 計測に使う機材 EGG(エレクトロ・グロトグラフィ) 簡単にEGG(エレクトロ・グロトグラフィ)について説明しておきます。 EGGは喉頭の左右両方に電極パッドを装着します。 5mVと言う微弱電流を片方からもう一方に電気を流します。 例えば右から左に電気を流す場合、声帯が合わさっていない場合は電気は流れません。 声門が閉じた際に電気が流れ、1サイクルの中で何パーセント程度、声帯が合わさっているのかを計測する機材になります。 具体的な声門閉鎖の目安となるのは以下の通りです。 さらに歌声において各種発声の目安となる声門の閉鎖率は以下の通りです。 ケース1 裏声の発声で作られたミックスボイス こちらはF4の発声をミックスボイス(聴感上は裏声と地声の間のような声)で発声している女性の声です。 声門の閉鎖率は35〜40 %程度。 上記の表と照らし合わせる… 続きはこちら≫

  • 発声筋にも速筋と遅筋がある?

    骨格筋は筋線維が収縮することで力を発揮しますが、収縮速度の速い「速筋」は、大きな力を短時間に発揮することができ、瞬発力やパワーが必要な運動を行うときに活躍します。 ただし疲労に弱いとされています。 一方、収縮速度の遅い「遅筋」は、長い間収縮し続けることができるので、持続的な運動を行うときに活躍します。 ただし瞬発的に強い力を生み出すのに弱いとされています。 人間の体は筋肉の部位により筋繊維の割合が異なります。 体の部位毎に使われる用途などによってこの割合を変えながら進化していったのかもしれませんね。 声をコントロールする喉頭の各種筋肉にも割合の違いはあるのか? National Library of Medicineに掲載されている論文では内喉頭筋の筋繊維の割合が書かれています。 Thyro-arytenoid muscle (甲状披裂筋) 声帯の収縮筋として機能。 発声においては声門閉鎖、地声の生成が主な機能とされます。 2/3が速筋。1/3が遅筋。 Crycothyroid muscle(輪状甲状筋) 声帯に張りを作る。 音程のコント… 続きはこちら≫

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