2025年 08月 の記事一覧

  • 声の疲労、その正体は筋肉疲労だけじゃない!

    多くの歌手やボイストレーナーは「声の疲労=筋肉の疲れ」と考えがち。 「筋トレの超回復のように、適度に声を痛めつければ強くなる」というのは誤解です。 声の疲労の本当の原因 声帯は発声中に毎秒100回。テナーの高音では500回、ソプラノの高音では1000回以上も振動しています。 その時に生じる最大の負担は、筋肉の疲れだけではなく、声帯粘膜同士の摩擦です。 この摩擦が強くなると、 ・粘膜内で熱が発生 ・微細な損傷 ・摩擦熱を下げるために組織内の水分移動による浮腫 が起こります。 歌唱と話し声と比べる16倍以上の摩擦熱が生じる事も 特に高音や大音量で歌うと、エネルギー損失は急増します。 1オクターブ上がるごとに摩擦熱は4倍、2オクターブで16倍にもなると言われています。 これが声質の劣化や音域制限の大きな原因です。 なぜ「超回復」理論が声には通用しないのか? 筋肉は損傷後の回復で強くなりますが、声帯の粘膜は同じ構造ではありません。 過剰な摩擦で粘膜が硬化・線維化すると、柔軟性が失われます。 声帯はトレーニングでは「傷つけない」ことが前提にな… 続きはこちら≫

  • オーディション審査の音域記入欄を検討してみた

    Techniqued Vocal Range Index(TVRI)技術的歌唱音域の指標について 従来のオーディションでは、応募者に「音域(Range)」を自己申告させるケースが多く見られます。 例:地声はG3〜E5、裏声は〜 など。 しかし、この数字だけでは、実際に現場で使える声の幅を正確に判断することはできません。 そこで提案したいのが「技術的歌唱音域の指標」、Techniqued Vocal Range Index(TVRI)という新しい評価指標です。 これは、応募者が“どこまで出るか”ではなく、“どこまで音楽的に使えるか”を可視化するための方法です。 従来の音域申告の課題 単純な音域申告には、以下の問題があります。 瞬間的に出せる音と、持続して歌える音が混同される  短く出せても、フレーズとして使えない音は実用的ではありません。 声区ごとの特性が反映されない  地声・ミックス・頭声で同じ高さでも発声負荷や音質が異なります。 選曲やキャスティングのミスマッチを招く(と言うか、無駄な審査時間を取らせない事を優先する) 申告値… 続きはこちら≫

  • 音域の本当の見方 — VRPが教える“使える声

    ブログ「オーディションでの音域の欄。あなたはどう書く?」が大変好評でしたので、今回はさらに専門性を高めた視点からお話しします。 テーマは「VRP(Voice Range Profile)」 単なる音域が「ここから、ここまで」では見えてこない、本当に使える声の評価方法について解説します。 オーディションの音域欄、本当に意味がある? 多くのオーディション用紙には「音域」の記入欄があります。 例:地声はG3〜E5、裏声は…といった具合です。 しかし、この数字だけでその人の歌唱力や適性を正確に判断できるでしょうか? 音楽ジャンル(クラシックかCCMか)、メロディのパターン、テッシトゥーラ(楽曲中でよく使う音域)、発音や歌詞の母音、声質の方向性など、影響する要素は非常に多岐にわたります。 そのため、単に「地声でどこまで出る」「裏声でどこまで出る」と書くだけでは、本当の音域は見えてきません。 賭けても良いですが、審査員はこの欄を大した指標にならない事も分かっていると思います。(笑) 現実的な対応(少しだけ皮肉を込めて) とはいえ、応募用紙に空欄は許され… 続きはこちら≫

  • 思春期の女性の息っぽい声・声の出しにくさについて

    10代前半の女の子のシンガーや俳優をトレーニングしていると、「息っぽい」「地声が出しにくい」という声の悩みに出会うことがあります。これは本人の努力不足ではなく、思春期特有の生理的変化が関わっているケースが多くあります。 息っぽさの主な原因:後部声門ギャップ(posterior glottal gap) 思春期女子の息っぽさは、声門後部の隙間(mutational chink)が主要因の一つとして古くから報告されています(Gackle, 1991)。 これは、披裂間筋(interarytenoid muscle)の収縮が未熟または弱いことで起こる一過性の閉鎖不全です。 特に10〜14歳頃の女子では、喉頭全体の形態がまだ成長途中であり、声帯の長さや厚みは成人女性より短く・薄い状態です。 そのため、閉鎖動作の精度や持久性が低く、息漏れの多い声質(breathiness)になりやすい傾向があります。 実際、健康な若年女性でも後部声門ギャップが高頻度に見られるという内視鏡研究があり(85%以上で観察)、必ずしも病的ではありませんが、歌唱や長時間の発声では効率低下を招くことが示され… 続きはこちら≫

レッスンを予約する