ボーカルマッサージ一覧

  • 甲状舌骨膜(thyrohyoid membrane)へのアプローチ

    ボーカルマッサージ/ボーカル・マニュアルセラピーで喉頭周辺へのアプローチで重要な部位の1つを紹介します。 甲状舌骨膜(thyrohyoid membrane)と言われる部位です。 甲状舌骨膜とは? 舌骨と甲状軟骨(のどぼとけ)の間をつなぐ組織です。 専門書では下記のような記載がありました。 「舌骨下面と甲状軟骨上縁の間に張る弾性繊維に富む結合組織性の膜で、以下のような特徴がある。 正中部は両側縁は歩く肥厚し、正中甲状舌骨靱帯、甲状舌骨靱帯と呼ばれる。 左右に小さな穴があり、上喉頭動脈、上喉頭静脈、上喉頭神経を通す」とあります。 筋肉ではなく、コラーゲンを多く含む靱帯で形成されていると言う特徴があります。 甲状舌骨膜の穴から通る、上喉頭神経は音程の生成に必須な輪状甲状筋を支配します。 上喉頭動脈は甲状舌骨筋、粘膜、喉頭の腺に栄養を供給します。 つまり、歌唱や会話の技術に不可欠な筋肉をコントロールする神経が通っており、声帯を含む喉頭の内側の栄養を供給するのに重要な部位と言えます。 周辺の筋肉の緊張により幅が狭い事がある 喉頭の周辺の筋肉が緊… 続きはこちら≫

  • 「強い息」は高い声のトレーニングの手助けになるのか?

    「高い声は息の力で出すんだよ!」と言うのは僕も子供時代の音楽の授業で言われた事がありましたが果たしてそうなのでしょうか? 未だにこの様な指導されているボイストレーナーは少なくないと思います。 今回は科学的に「強い息」は高音発声の手助けになるのか?を検証してみようと思います。 肺圧で高音って出せるの? ここに肺圧と声帯の長さと基本周波数(ピッチ)の関係性を表した表があります。 縦軸が基本周波数。横軸が肺圧(息の力)。 そして各声帯の長さ(センチメートル)毎に出る基本周波数を線で表現しています。 この図で見ると非常に興味深い事が見えてきます。 0.5cmの声帯では肺からの圧で約75Hz(E♭2)から最大220Hz(A3)程度まで上昇出来る事がわかります。 それに対して1.2cmの声帯は肺からの強い圧を与えても約225Hz(A3)からほぼ変化しない事がわかります! 声帯が伸びていない低音では肺圧の影響を大きく受ける さきほどの表では声帯が伸びていない、声帯が短い低音では肺圧の影響を音程が受けやすい事がわかります。 なぜこの様な事が起きるのでしょ… 続きはこちら≫

  • 地声の時、音程はどうやって作ってるの?

    前回の話しでは裏声で靱帯の層を振動させて音程を作る方法を解説しました。 今回は地声の発声時にどのように音程を作っているのかを解説します。 前回のおさらいとして音程を作る際、声帯は弦とバネの特性を持つことを確認しましょう。 声帯のバネの特性で基本周波数(ピッチ)を考えると、、、 剛性(かたさ)が強ければ音程は高くなる。 質量が高ければ音程は低くなる。 声帯の弦の特性で基本周波数(ピッチ)を考えると、、、 長さが短ければ音程は低くなる。長い声帯の男声は音程が低いと言う事ですね。 ストレスがストレスが高ければ高くなる。 密度が高ければ弾くなる。 声帯の特性について詳しくは前回のブログをご覧下さい。 ここから地声の音程生成のお話し 地声と裏声の発声を考えるのにあたり、声帯を2つのグループに分けます。 カバー(上皮+靱帯) ストレスは受動的で主に輪状甲状筋から受けると考えられる。靱帯は自ら縮む事が出来ないため。 カバーのみの発声は裏声に使われる。 ボディ(甲状披裂筋) 甲状披裂筋は声帯内部に走る筋肉で自ら縮む事が出来る。従って自らストレスを声… 続きはこちら≫

  • 裏声ではどうやって音程を作っているの?

    前回のお話しで声帯に掛かるストレスは靱帯と筋肉の両側に加わる事まで解説しました。 では基本周波数(ピッチ)を発声するために声帯ではどのような事が行われているのでしょうか? 声帯は弦とバネの特性を持つ 声帯は弦の特性を持つと言われてきましたが、声帯の振動をモデリングする際、バネの特性も理解する必要があります。 声帯のバネの特性で基本周波数(ピッチ)を考えると 剛性(かたさ)が強ければ音程は高くなる。 質量が多ければ音程は低くなる。 重いと振動が遅くなると言う事です。 これは理解しやすいですね 声帯の弦の特性で基本周波数(ピッチ)を考えると 長さが長ければ、音程は低くなる。長い声帯の男声は音程が低いと言う事ですね。 ストレスが高ければ音程は高くなる。 密度が高ければ音程は低くなる。 注意ポイントは長さ(L)×2になっている事です。長さと言うのは音程に非常に大きな影響を及ぼします。 それを超えるストレスを声帯に加える必要があるため、高音発声時には声帯に与える緊張は非常に高い必要があると言う事です。 声帯の物理的な変化と音程の変化… 続きはこちら≫

  • 声帯の「部位毎に」特性が違う!?

    声帯にはおおまかに粘膜、靱帯、筋肉の層があります。 この3層のどこを振動体とするのか?で発声出来る限界の高音は変わります。 このグラフは声帯の粘膜、靱帯、筋肉のそれぞれに分け、声帯を引っ張るためにどれだけのストレスが必要なのかを計算したモデルになります。 左側の線から粘膜、靱帯、筋肉です。 このグラフから読み取れるのは下記の通りです。 声帯の伸び方は一定ではない 縦軸がストレスの度合い。横軸が何パーセント声帯の部位が引き延ばされたかを表しています。 1つの例としてグラフの右側の点線、筋肉の層を観ると、 15%声帯の筋肉層を伸張させるのに、約2kPa程度のストレスが必要。 30%声帯の筋肉層を伸張させるのに、約10kPa程度のストレスが必要。 長さを15%変えるのと、30%変えるのでは実に5倍の力が必要と言う事になります。 つまり声帯を引き延ばせば引き延ばすほど声帯は硬くなり、さらに引き延ばすが大変になると言う事です。 高音になれば、少し音程を上げるのにも大きな労力がいると言う意味では体感的にも一致するのではないでしょうか? ここ… 続きはこちら≫

  • 輪状甲状筋と甲状披裂筋って「どちらが強い」?

    声に置いてどのような仕組みで音の高さを生成しているのかを考えます。 声の高さの生成は一般的な認識よりも複雑な仕組みをしています。 声帯でどのように音程をコントロールしているのか? 主に2つの要素でコントロールをしています。 1 声帯の長さを変える 2 声帯にかけるストレスを変える。(ストレスを加えると硬化します) ではどのように長さとストレスを変えるのか? 甲状披裂筋(TA)の活動。 活動すると声帯は縮みます。声帯のストレスは高くなります。 甲状披裂筋は声帯の内側に走っています。 輪状甲状筋(CT)の活動。 活動するとと声帯は伸びます。声帯のストレスは高くなります。 呼気圧を高める。 呼気圧を高めると動的なストレスが声帯に加わります。 喉頭モデル 輪状甲状筋(CT)と輪状甲状筋(CT)の活動の関係性 輪状甲状筋は垂部(CT1)と斜部(CT2)左右対にになっています このモデルは喉頭を左側から見た状態です。 こちらのCTとTAのモデルを観ると、垂部(CT1)は縦方向への力。斜部(CT2)は斜め下方向への力を担っています。… 続きはこちら≫

  • 発声筋にも速筋と遅筋がある?

    骨格筋は筋線維が収縮することで力を発揮しますが、収縮速度の速い「速筋」は、大きな力を短時間に発揮することができ、瞬発力やパワーが必要な運動を行うときに活躍します。 ただし疲労に弱いとされています。 一方、収縮速度の遅い「遅筋」は、長い間収縮し続けることができるので、持続的な運動を行うときに活躍します。 ただし瞬発的に強い力を生み出すのに弱いとされています。 人間の体は筋肉の部位により筋繊維の割合が異なります。 体の部位毎に使われる用途などによってこの割合を変えながら進化していったのかもしれませんね。 声をコントロールする喉頭の各種筋肉にも割合の違いはあるのか? National Library of Medicineに掲載されている論文では内喉頭筋の筋繊維の割合が書かれています。 Thyro-arytenoid muscle (甲状披裂筋) 声帯の収縮筋として機能。 発声においては声門閉鎖、地声の生成が主な機能とされます。 2/3が速筋。1/3が遅筋。 Crycothyroid muscle(輪状甲状筋) 声帯に張りを作る。 音程のコント… 続きはこちら≫

  • 裏声 / 地声発声時の喉頭原音を音響解析

    ここまでたくさん、声帯のコントロールが地声 / 裏声 / ミックスボイス 発声時にどのように行われているのか解説を進めてきましたが、今日は音響的に何が起こっているかについて解説をしていきます。 以前、息と声って何が違うの?で少し説明しましたが、音と言う物理現象は空気の粒子が隣の空気の粒子にぶつかってビリヤードの玉の様に振動が移動する事だと解説しました。 倍音について 音声について話す時、倍音は必ず知っておく必要がある項目ですので、覚えておきましょう。 声の主な情報となる整数次倍音は、 100Hz = G1とG#1の間を基音(音程)とすると 200Hz 第2倍音 300Hz 第3倍音 400Hz 第4倍音 と言う規則性を持っています。 要は、 歌っている音程の周波数×1,2,3=それぞれの倍音になります。 ※定常波において、最も大きく揺れ動く点を腹といい、まったく動かない点を節といいます。 周波数とは、音楽で言う音の高さですので、100Hz(=G1),200Hz(=G2),300Hz(=D3)...と言う事は、声は短音であっても実は倍… 続きはこちら≫

  • 声帯靭帯の硬度から高音発声開発を考える

    高音発声に憧れてボイストレーニングを始める方はとても多いのは、もうご存知の事だと思います。 高音の音域拡大するためには、 技術の向上 →声帯や共鳴腔をどのようにコントロールするか? 身体能力の向上 →筋肉がどの程度、発達しているか?、またその筋肉を十分に使えているか? この2点がとても重要な要素になります。 ただ身体能力の向上の1つに「声帯靭帯の硬化」と言うのを聞いた事はないと思います。 今日は声帯靭帯が高音に及ぼす恩恵と、それ以外の高音発声に不可欠な要素についてお話してみようと思います。 声帯靱帯が高音発声に重要な理由 ユタ大学の音声学者、そして音声学者のバイブルともいえる「音声生成の科学―発声とその障害(多分、音声外来の医師、音声学者で読んだ事のない方はいないと思います。)」の著者 Ingo Titze氏の話です。 「声帯の靱帯の硬さが、声の高さに強く影響を及ぼす」と言うことを直接伺う事が出来ました。 靱帯を含む声帯の構造についてはこちら 具体的には、猿の「キー!!」と言う鳴き声は靱帯の硬さによって繰り出されてい… 続きはこちら≫

  • 解剖学的に観る声帯の運動パターンとボイストレーニングへの応用

    桜田ヒロキのレッスンではファルセットの練習を多く使いますが、「それってなんで?っ」て思った事はありませんか? 実はそれには科学的、解剖学的な理由があります。 今日は「ファルセットがなんでボイストレーニングに重要なの?」について解説しようと思います! 声帯構造について 声帯は5層の構造によって構成されています。 上皮 epithelium 浅層(粘膜固有層) Superficial lamina propria 中間層(粘膜固有層) Intermediate lamina propria 深層(粘膜固有層) Deep lamina propria 筋肉層  Muscularis 上皮・浅層はゼリー状の粘膜で出来ているそうです。 中間層はエラスチンと言う素材で出来ています。弾力性に優れ、皮膚や血管に含まれているタンパク質です。 深層はコラーゲンで出来ています。靱帯、腱、骨、軟骨などを構成するタンパク質で、これまた弾力性に優れ密度が高ければ強い衝撃にも絶える事が出来ます。 「カバー・ボディ」の2層構造と「粘膜・靱帯・筋肉」の3層構造論があ… 続きはこちら≫

レッスンを予約する