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歌手のおかれる環境と医療現場のギャップから生まれる、発声障害(MTD)の難しさ
歌手特有の声の世界 歌手の声は単なる「音声」ではなく、芸術表現そのものです。 発声の細部には、声区の移行、音色の変化、ブレスやビブラートのニュアンスなど、一般の話し声とは大きく異なる複雑な要素が絡み合っています。 しかし、こうした歌唱の特殊性や芸術性を理解することは、必ずしも医療従事者にとって容易ではありません。 MTDの誤診リスク 筋緊張性発声障害(MTD)は、器質的な損傷がないにもかかわらず、声帯周辺の筋肉の過緊張によって声の出しにくさや質の低下を招く機能性音声障害です。 プロ歌手では、特定の音域だけ出しにくい、長時間歌うとコントロールが効かなくなる、といった症状が現れることがあります。 問題は、これらの症状が「歌唱技術の不足」や「使いすぎによる一時的な疲れ」と誤解されやすいこと。 話声だけを基準に診断すると、歌唱中にのみ現れる微妙な筋緊張や声の破綻を見逃してしまい、診断や治療が遅れることも少なくありません。 専門評価の必要性 MTDを正確に診断するには、以下のような専門的アプローチが必要です。 ストロボスコピーによる声帯振動の観察 歌唱課題を含… 続きはこちら≫