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ツアー中に発声障害に罹患したロック歌手のケース(第2話)
前回は、ツアー中に代償的な発声が固定化してしまったロック歌手のケースを紹介しました。 今回は、実際に行われた治療とトレーニングのプロセス、そして本人がどのように感じたのかを見ていきます。 初期の対応 最初の段階で大切なのは「声をすぐにリセットして良い状態に持って行く事」です。 歌手はステージを止めることが難しいため、短時間で効果を感じられる介入が優先されました。 ・喉頭マニュアルセラピー:首や喉周囲の筋肉を直接ほぐし、過剰な緊張を緩める マニュアルセラピーについては詳しくはこちら ・ストロー発声(SOVT):声帯への負担を減らし、効率的な振動を取り戻す ・インイヤーモニターの調整:声を無理に張り上げなくても聞こえる環境を整える 歌手はこの段階で「喉の締め付けが少し和らいだ」「高音が少し楽に出る」と語っており、即効性のある変化に大きな安心感を覚えていました。 中期のトレーニング 次のステップは、代償的な発声を少しずつ置き換える作業です。 レゾナント系発声(響きを強化する):軽く響きを伴った声を思い出す → 言語聴覚士がよく行う「レゾナント… 続きはこちら≫
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ツアー中に発声障害に罹患したロック歌手のケース(第1話)
アーティストは非常に過酷な環境で歌唱を要求されています。 特に売れている時期や、売り出し時期には、一般の仕事に例えるなら「ブラック企業に勤めている状況で歌うことを求められる」ようなものです。 休息が不十分なままステージが続き、さらにメディア露出や移動も重なることで、声は常に限界ギリギリに追い込まれます。 今回は3編に渡って、アメリカで実際に発声障害に陥ったアーティストの診断からリカバリーまでを追ってみようと思います。 ロックバンドのメインボーカル ・全国ツアー中、連日90〜120分のステージ ・サウンドチェック、移動、インタビューで休息不足 ・インイヤーモニターの返りが不十分で、つい声を張ってしまう このような状況は、ツアーでは珍しいことではありません。限られたリハーサル時間や会場ごとの音響の違いが積み重なり、どうしても負担が増してしまうのです。 発症経緯 ・初週のステージから声枯れが出始める ・高音部を無理に押し出すような発声が増える ・苦しい発声を繰り返すうちに「代償的な発声」が固定化 ・声が出にくい → さらに力む → さらに悪化、という悪循… 続きはこちら≫
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声の病気と代償的な発声のケーススタディ
〜手術とリハビリから学ぶ歌手への警鐘〜 声帯ポリープや結節といった病変は、歌手にとって避けて通れないリスクのひとつです。 声を多く使うプロ・ボイス・ユーザーは常に怪我や不調とのリスクと戦っています。 声帯結節などが出来た場合、「手術をすればすぐに声が戻る」と思われがちですが、実際の現場ではそう単純ではありません。 術後に残る「代償的な発声」 桜田がVocologyの中で受けたクラスの中で紹介された症例では、 声帯ポリープを二度手術で取り除いたにもかかわらず、声は依然として低く、息漏れが強く、声量も戻りませんでした。 原因は、長期間にわたり 病変を抱えた声帯に合わせて作られた発声習慣(代償的な発声) です。 ポリープや結節がある状態で歌い続けると、 ・喉の奥で力んで声門を強く押し閉じる。 ・逆に声門を十分に閉じられず、息漏れで補う といったパターンが「その人の声の出し方」として固定されます。 手術で病変を除去しても、この癖が残れば自然な発声には戻れません。 桜田の現場で起きたこと 桜田のクライアントの中にも、代償的な発声の影響で 地声が… 続きはこちら≫