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歌手の機能性発声障害 第4話:歌唱発声と臨床評価の乖離
第4話:歌唱発声と臨床評価の乖離 「会話は問題ないのに、歌うと声が詰まる」—— 歌手や声優にとって、こうした悩みは決して珍しくありません。 実際、病院で診察を受けた際に「異常なし」と告げられるケースも多いのですが、その一方で本人は歌唱時に深刻なパフォーマンス障害を感じています。ここに、日常会話を前提とする臨床評価と、歌唱という高度なタスクの間に存在する大きな乖離が表れています。 本稿では、このギャップがなぜ生じるのかを整理し、研究知見と臨床の限界、そしてボイストレーニングによるハビリテーションの可能性について考察します。 1. 歌唱の要求と臨床検査のギャップ 臨床現場での検査は、ストロボスコピーや内視鏡を用いて「いー」といった簡単な発声をさせ、その際の声帯の周期性や閉鎖の程度を観察するのが一般的です。これは日常会話に必要な最低限の声の機能を評価するには十分ですが、歌唱のような高度な発声タスクを反映できているとは言いがたいでしょう。 歌唱には、以下のような特徴的な要求があります。 - メロディの変化に沿った複雑な声帯運動 - … 続きはこちら≫