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歌手の機能性発声障害 第6話:心因性要素・歌手のイップスと発声障害
第6話:心因性要素・歌手のイップスと発声障害 「リハーサルでは普通に歌えるのに、本番で急に声が詰まってしまう」 「マイクの前に立つと、喉が固まって息もれの声しか出なくなる」 こうした声の不調を訴える歌手や声優は少なくありません。検査では異常が見つからず、日常会話では問題なく声を出せるのに、ステージや収録といった特定の環境でだけ症状が現れる。この現象は、スポーツや楽器演奏で知られる「イップス(yips)」と非常に似ています。 本稿では、イップスの定義と研究を整理し、歌手に特有の「声のイップス」について掘り下げていきます。さらに、治療法がまだ確立していない現状の中で、スポーツや音楽領域の研究から応用できるヒントを検討します。 1. イップスとは何か? イップス(yips)は、もともとゴルフのパット動作で知られる現象で、技術的には可能な動作が心理的プレッシャーや神経的要因によって阻害されるものです。手が震える、痙攣する、動作が固まるなど、特定のタスクで制御不能な運動が起こります。 Smithら(2003)の研究によれば、ゴルファー… 続きはこちら≫