2025年 10月 05日 の記事一覧

  • 歌手の機能性発声障害 第8話:予防とセルフケア ― 障害を起こさないためのボイストレーニング

    第8話:予防法 ― 障害を起こさないためのボイストレーニング 歌手にとって、声は単なる道具ではなく「表現のすべて」を担うものです。しかし、声の障害に悩む歌手は少なくありません。結節やポリープのような器質的病変から、機能性発声障害と呼ばれるパターンまで、その多くは予防やセルフケアでリスクを減らすことができます。 実際に、臨床研究でも一般的な声の衛生(vocal hygiene)やウォーミングアップ、さらにはクールダウンが、声の健康を維持し、場合によっては手術を回避する効果を示すと報告されています。 本稿では、歌手にとって実際に役立つセルフケアを、研究知見と現場での実践を交えて整理していきます。 1. 声の衛生 ― 予防の第一歩 声の障害予防において最も基本的で効果的なのが声の衛生(vocal hygiene)です。これは、発声を妨げる生活習慣を避け、声帯にとって良い環境を維持するための総合的なケアを意味します。 水分補給 声帯粘膜は潤滑性が高いほど効率的に振動します。水分不足は発声閾値圧(PTP)を上昇させ、同じ声を出すにも余計なエネルギ… 続きはこちら≫

  • 歌手の機能性発声障害 第7話:機能性発声障害における統合的アプローチ

    第7話:機能性発声障害における統合的アプローチ 歌手や声優の発声障害をサポートしていると、しばしば痛感するのは「一人の専門家だけでは十分に対応できない」という現実です。器質的な異常がないケース、検査では「異常なし」と診断されるケース、そして歌唱でのみ深刻な支障が現れるケース——これらは機能性発声障害と呼ばれ、日本でも診断名として一般的に用いられています。 しかし、この診断名だけで治療や支援の方向性が明確になるわけではありません。むしろ問題はここから始まります。歌手にとって求められる声のレベルは、日常会話を超える非常に高度なものだからです。本稿では、機能性発声障害に対して有効とされる統合的アプローチについて整理し、医師・言語聴覚士(SLP)・ボイストレーナーの役割を比較しながら考えていきます。 1. なぜ統合的アプローチが必要か 機能性発声障害の厄介さは、診断や評価の曖昧さにあります。器質的疾患(声帯結節やポリープなど)であれば診断名がつきやすく、治療方針も比較的明確です。ところが機能性発声障害は、ストロボスコピーでも決定的な異常所見が見つかりにくく、… 続きはこちら≫

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