ミックスボイス一覧

  • 歌を歌うのに母音ってなんで重要なの?

    歌唱において母音が中心的役割を果たす理由── 発話と歌唱の音響構造を比較しながら考える「良い声」の正体 歌声を聴いたとき、「この人は良い声をしている」と感じる場面は多くあります。 人は専門的な知識がなくても、歌声の魅力を直感的に判断でしています。 よく桜田は良い声、そうではない声はプロが聴くまでもないと言っています。 しかし、その“良い声”を構成している具体的な要素については、感覚で語られることが多く、科学的な裏付けが十分に共有されていない場合もあります。 音声学や歌唱における音声科学の研究を踏まえて整理していくと、歌声の印象に最も大きな影響を持つのは母音であるという構造が見えてきます。音程、強弱、ビブラート、リズム、フレーズ感など、歌唱を形づくるさまざまな要素はもちろん重要ですが、その根底にある音色(tone)を決定しているのは母音であり、母音の質が歌声全体の魅力を大きく左右しています。 歌唱における母音の役割を理解するためには、発話と歌唱の音響的な違い、さらに言語ごとの特徴やジャンルごとのスタイルを整理していく必要があります。本ブログでは、これらを専門的な観… 続きはこちら≫

  • 加齢の声への影響とボイストレーニングについて論文を調べてみた 第2話

    【第2話】加齢しても発声機能は改善できます 有酸素運動・継続歌唱・段階的ウォームアップの科学的根拠と実践的アプローチ 加齢に伴って声の立ち上がりが遅くなる、高音が硬くなる、息漏れが増えるなどの変化を自覚する方は非常に多いです。 第1話 加齢で声に何が起きるのかで扱ったように、こうした変化は声帯粘膜の物性変化、声帯筋の反応性低下、神経伝達速度の変化など、加齢による生理学的変化で説明できます。 しかし重要なのは、これらの変化が「改善できない」という意味ではない点です。近年の研究では、発声前の身体的準備、発声頻度、日常の運動習慣などが、加齢後の発声機能に強く影響することが示されています。さらに、適切なウォームアップ設計や中長期的なトレーニング計画を導入することで、加齢後でも発声機能が向上することが確認されています。 今回扱う2つの研究は、加齢声への介入を設計する上で非常に重要な示唆を与えてくれます。 発声前の有酸素運動が声の立ち上がりを改善する理由 Brownら(2019)は、軽い有酸素運動が発声効率に与える影響を検証しました。研究の中心は、発声開始に必要な最小… 続きはこちら≫

  • なぜ発声障害の音声療法はマッサージとSOVTに偏るのか? 2話

    なぜ喉頭マッサージ(LMT)とSOVT(半閉鎖声道発声)では治らないのか? ——専門家も警鐘を鳴らす“Shortcut Therapy”と、歌手の機能性発声障害の根治に必要な視点 発声の不調で相談に来られた方に治療歴を伺うと、多くの方が次の2つを挙げます。 「喉頭マッサージ(LMT)を数回受けた 」 「SOVT(半閉鎖声道発声)で練習した」 これは日本に限らず、海外でも共通して語られる“典型的な治療体験”です。そして多くの歌手が同じように言います。 「少しは良くなるけれど、すぐ元に戻ってしまう」 「歌うと症状が出る。会話は問題ないのに」 これらは偶然ではなく、発声障害治療における構造的な問題です。 なぜ発声障害の音声療法はマッサージとSOVTに偏るのか?では、なぜ機能性発声障害の再発が起こりやすい喉頭マッサージやSOVTが治療の中心になっているのか?について述べました。 本稿の第2話では、なぜ治療が喉頭マッサージ(LMT)とSOVTの2つに偏りやすいのか、その背景を整理し、専門家が警鐘を鳴らす理由を探ります。そして、歌手の機能性発声障害(筋緊張… 続きはこちら≫

  • 加齢の声への影響とボイストレーニングについて論文を調べてみた 第1話

    【第1話】加齢で声に何が起きるのか 科学論文から読み解く「声が出にくい理由」と、その正しい理解 「昔より声の立ち上がりが遅い」 「高音が出しづらく、伸びが悪い」 「なんとなく息っぽさが増えた気がする」 40代〜60代の歌手、または声を日常的に使う方々がよく口にする変化です。多くの人がこの変化を「衰え」と感じていますが、必ずしもそうとは断言できません。 声帯は歳とともに“構造が変化する”。その変化が機能に影響しているだけで、適切に対処すれば改善可能 と考えています。 この第1話では、「加齢によって声帯で何が起きているのか」を科学論文の記述に基づいて整理し、さらに桜田の臨床経験を加えて理解を深めていきます。 なぜ歳をとると声が出にくくなるのか? 加齢による声の変化は「Presbyphonia(加齢性発声変化)」と呼ばれています。これは病気ではなく、生理的・構造的な変化です。 しかし、それを知らないと以下のような変化を誤解してしまいます。 ・ウォームアップに時間がかかる ・高音が硬く感じる/伸びがなくなる ・息… 続きはこちら≫

  • ボーカル・ウォーミングアップの科学 第5話:女性歌手と月経周期

    第5話:女性歌手と月経周期——周期で“効くウォームアップ”が変わる理由 「生理前になると高音が詰まる」「声が重くてピッチが当たりづらい」「何となく声の反応が鈍い」 女性歌手であれば、誰もが一度はそんな経験をしているのではないでしょうか。 ウォーミングアップをしても「いつものように声がでない」日がある。それを“体調の波”として片づけてしまうことも多いですが、実際にはそこに明確な生理学的根拠があります。 女性の身体は、エストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)の周期的な変動によって、水分バランス、血流、筋の反応速度、そして声帯の粘膜構造までも変化させています。 この章では、月経周期における声の変化を科学的に整理し、それに合わせてウォーミングアップの順序・内容・強度を変えるための具体的なアプローチを提案します。 なぜ「いつものウォームアップ」が効かない日があるのか 多くの女性歌手が感じる“声の波”は、ホルモンによる声帯の変化が主な原因です。Abitbolら(1989〜1999)は、女性歌手の声帯を内視鏡で観察し、月経周期の中で声… 続きはこちら≫

  • ビブラートの科学4 – ビブラートの消失と再獲得

    第3章:ビブラートの消失と再獲得 ― 声の健康とリハビリの視点から ビブラートは、声が健康に働いているかどうかを示す「指標」のひとつといえます。 第1章「ビブラートと言う物理現象」ではそのメカニズムを、第2章「ビブラートのトレーニング方法」では安定した揺れを育てるトレーニング法を取り上げました。 そしてこの第3章では、ビブラートが「失われる」とき、声の内部で何が起こっているのかを整理し、その再獲得の道筋を探ります。 多くの歌手が「ビブラートがかからなくなった」「以前のような自然な揺れが戻らない」と感じるとき、そこには単純な技術的要因だけでなく、喉頭の筋緊張や粘膜の変化、さらには神経系の働きが関係していることがあります。 このような変化は、短期的な声の酷使や炎症から、慢性的な過緊張、加齢にともなう筋萎縮まで、非常に幅広い要因によって起こります。 ビブラートが生まれる仕組みを「反射」や「自動調整」として捉えると、その消失は「声の自律的な揺れ」が止まった状態だと考えることができます。 言い換えると、声帯が正しいバランスで動くためのフィードバック・ループが… 続きはこちら≫

  • ビブラートの科学1 – ビブラートと言う物理現象

    ビブラートのメカニズム ― いまだ完全には解明されていない現象です ビブラートは、歌声を豊かにし、音楽的な表現を支える大切な要素です。しかし「なぜ声が周期的に揺れるのか」という問いに対しては、いまだ明確な答えがあるわけではありません。多くの研究者が半世紀以上にわたりこの現象を解析してきましたが、中枢神経によるリズム生成なのか、喉頭筋群の反射的な反応なのか、それとも聴覚フィードバックによる自己調整なのか、結論は一つに定まっていません。 それでも、Sundberg(1987, 2003)をはじめとする多くの音声科学的研究によって、ビブラートの物理的・生理的な特徴についてはかなり明らかになってきました。本稿では、これまでの研究成果を整理しながら、ビブラートのメカニズムについて現在考えられていることを紹介します。 ビブラートの定義と特徴 ビブラートは、音高(基本周波数F0)が周期的に変動する現象として定義されています。Sundberg(1987, 2003)は、ビブラートの特徴を以下の4つの観点から整理しています。 Rate(速度) 1秒間に何回の揺れが起こるかを示します… 続きはこちら≫

  • シリーズ総括! 結局ミックスボイスって何?

    結局ミックスボイスって何?― 声区・音響・筋肉の科学から解説 「ミックスボイス」という言葉は、今やボイストレーニングの現場でもっとも多く使われる用語のひとつです。 しかし実際のところ、ミックスボイスとは何を意味するのか、その定義は人によって大きく異なります。 地声と裏声の“中間”という説明だけでは、歌唱時に起こっている現象のごく一部しか説明できません。 このシリーズでは、声帯振動(source)と声道共鳴(filter)の両面から、ミックスボイスを科学的・生理学的に整理し、歌唱・教育・リハビリテーションの視点から多角的に分析しました。 ここでは全9話の要点を振り返りながら、シリーズ全体の流れをひとつの“発声理論地図”としてまとめます。 第1章:ミックスボイスとは何か? ― 定義と誤解 「地声」「裏声」「ヘッド」「ファルセット」などの言葉が混在することで、学習者の混乱が生じやすくなっています。 ミックスボイスを理解するためには、まず用語の共通認識と言語の擦り合わせが欠かせません。 桜田は現場で「地声」「裏声」といった音の結果をイメージ… 続きはこちら≫

  • 機能性発声障害と歌手のためのボイストレーニング シリーズ総括まとめ

    機能性発声障害と歌手のためのボイストレーニング ― シリーズ総括 歌手にとって声は単なる楽器ではなく、自身の存在そのものを伝える表現手段です。 しかし現実には、多くの歌手が声の不調に悩み、時にはキャリアを左右する重大な局面に直面します。 「高音が出にくくなった」 「声がかすれて思うように響かない」 「ステージに立つと急に声が詰まる」 こうした訴えを持ちながら病院に行くと、「検査上は異常なし」と診断されるケースが少なくありません。 器質的な病変が見つからない一方で、歌唱における深刻な困難が続く。これが機能性発声障害と呼ばれる領域であり、歌手に特有の課題です。 本シリーズでは、全8話にわたり「歌手と機能性発声障害」をテーマに取り上げました。 ここではその総括として、各話を振り返りながら全体像を整理していきます。 第1話:発声障害とは?歌手が知るべき基礎知識 第1話ではまず「発声障害」という言葉の整理から始めました。 大きく分けると、声帯に結節やポリープといった物理的な変化が生じる器質性発声障害と、構造に… 続きはこちら≫

  • 歌手の機能性発声障害 第8話:予防とセルフケア ― 障害を起こさないためのボイストレーニング

    第8話:予防法 ― 障害を起こさないためのボイストレーニング 歌手にとって、声は単なる道具ではなく「表現のすべて」を担うものです。しかし、声の障害に悩む歌手は少なくありません。結節やポリープのような器質的病変から、機能性発声障害と呼ばれるパターンまで、その多くは予防やセルフケアでリスクを減らすことができます。 実際に、臨床研究でも一般的な声の衛生(vocal hygiene)やウォーミングアップ、さらにはクールダウンが、声の健康を維持し、場合によっては手術を回避する効果を示すと報告されています。 本稿では、歌手にとって実際に役立つセルフケアを、研究知見と現場での実践を交えて整理していきます。 1. 声の衛生 ― 予防の第一歩 声の障害予防において最も基本的で効果的なのが声の衛生(vocal hygiene)です。これは、発声を妨げる生活習慣を避け、声帯にとって良い環境を維持するための総合的なケアを意味します。 水分補給 声帯粘膜は潤滑性が高いほど効率的に振動します。水分不足は発声閾値圧(PTP)を上昇させ、同じ声を出すにも余計なエネルギ… 続きはこちら≫

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