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なぜ「アーティストの声」は魅力的なのか?- 母音で読み解く「良い歌声」の秘密
なぜアーティスト声は魅力的なのか? 良い歌声とそうでもない歌声はどこに差があるのでしょう? 同じ「あ〜」と歌っているはずなのに、歌声は人によってまったく違って聞こえますよね? 楽譜も歌詞も同じ、音程も同じ。それでも、アーティストの声を聴いた瞬間に「あ、この人の歌声だ」と分かることがあります。 一方で、「音は合っているのに、なぜか上手く聴こえない」と感じる歌もあります。 この違いは、どうやら感覚や好みの問題だけではないようです。 音声学や歌唱研究の視点から整理していくと、その大きな要因の一つが「母音の扱われ方」にあることが見えてきます。 母音は、僕たちが思っている以上に幅が広く、そして歌唱においては極めて重要な役割を果たしています。 「あ」母音は一つではない── 声道(共鳴腔)が変われば、無数の「あ」が生まれる 一般的に、日本語の母音は「あ・い・う・え・お」の5つだと教えられます。しかし、音響的に見ると、「あ」という母音は決して一つの固定された音ではありません。 母音の音色は、声帯で生まれた音が声道を通ることで形成されます。 この声道の形は、喉頭の位… 続きはこちら≫
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こんな時は休める? SOVTでリハビリする?チェックリスト
第3話 SOVTを使うべきか、声を休めるべきか ― 状態判断のための簡易チェックリスト ― 第1話 SOVTで出来る事と出来ない事を考えてみよう!、 第2話 こんな時はSOVTですらやったらダメ! では、SOVT(Semi-Occluded Vocal Tract)が万能な練習方法ではなく、声の健康状態によっては有効に働かない場合があることを説明してきました。 特に、炎症や浮腫がある状態では、SOVTが声帯振動を助けるどころか、条件によっては逆に不利に働く可能性がある、という点を整理しました。 では実際に、今の自分の声の状態では、SOVTを使うべきなのでしょうか。それとも、声を休めることを優先すべきなのでしょうか? 今回の第3話では、その判断の目安となる簡易チェックリストを提示します。 このチェックリストは、診断を目的としたものではありません。 あくまで、今が「トレーニングのフェーズ」なのか、「休養・回復を最優先すべきフェーズ」なのかを考えるための材料です。 判断に迷ったときに、立ち止まるための材料として使ってくれれば幸いです。 このチェック… 続きはこちら≫
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こんな時はSOVTですらやったらダメ!
炎症・浮腫があると、なぜSOVTの効果を感じにくくなるのか 第1話SOVTで出来る事と出来ない事を考えてみよう!では、SOVT(Semi-Occluded Vocal Tract)は声帯の振動そのものを直接改善する”練習”ではなく、声帯が無理な条件で振動しなくても済む環境を作るための手法であるという整理をしました。 SOVTは機能的な問題(技術を含む)には効果を発揮しやすい一方で、炎症や浮腫がある状態では効果を感じにくくなるケースがある、という点にも触れました。 第2話では、なぜ炎症や浮腫があるとSOVTが効きにくくなるのかを、声帯振動の「開始」と「維持」という視点から、もう一段踏み込んで整理していきます。 炎症・浮腫がある声帯では、まず構造的条件が変化する 炎症や浮腫がある声帯では、まず声帯そのものの構造条件が変化します。具体的には、次のような変化が起こります。 ・声帯の質量が増加する ・粘膜が厚くなり、動きが鈍くなる ・粘膜波の伝播効率が低下する ・振動が均一になりにくくなる これらはすべて、声帯という楽器そのものが「重く」… 続きはこちら≫
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SOVTで出来る事と出来ない事を考えてみよう!
第1話 SOVTはなぜ効くのか?なぜ「効かない」と感じる瞬間があるのか 近年、SOVT(Semi-Occluded Vocal Tract)という言葉を耳にする機会が増えてきたと思います。 ストロー発声、リップロール、ハミングなどは、ボイストレーニングの現場だけでなく、セルフケアとしても広く使われています。 一方で、次のような声もよく聞かれます。 「SOVTをやっても声が良くならない」 「特に裏声のSOVT発声が難しい」 SOVTは本当に万能なのでしょうか。それとも、やり方が間違っているのでしょうか。 SOVTは非常に優れたツールである一方、効果が上がりにくい条件があります。その多くは、「SOVTが間違っている」のではなく、多くの場合、声帯側の状態が変化していることに原因があります。 本記事ではまず、 ・SOVTの効果とは何か? ・なぜ効果が出にくいと感じる瞬間があるのか? を整理していきます。 SOVTの効果とは何か(声門上圧・声帯の衝突ストレス低減) SOVTとは、声道の一部を意図的に半閉鎖した状態で発声を行うエクササイズの総称です… 続きはこちら≫
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なぜ「アーティストの声」は魅力的なのか?- 母音で読み解く「良い歌声」の秘密
なぜアーティスト声は魅力的なのか? 良い歌声とそうでもない歌声はどこに差があるのでしょう? 同じ「あ〜」と歌っているはずなのに、歌声は人によってまったく違って聞こえますよね? 楽譜も歌詞も同じ、音程も同じ。それでも、アーティストの声を聴いた瞬間に「あ、この人の歌声だ」と分かることがあります。 一方で、「音は合っているのに、なぜか上手く聴こえない」と感じる歌もあります。 この違いは、どうやら感覚や好みの問題だけではないようです。 音声学や歌唱研究の視点から整理していくと、その大きな要因の一つが「母音の扱われ方」にあることが見えてきます。 母音は、僕たちが思っている以上に幅が広く、そして歌唱においては極めて重要な役割を果たしています。 「あ」母音は一つではない── 声道(共鳴腔)が変われば、無数の「あ」が生まれる 一般的に、日本語の母音は「あ・い・う・え・お」の5つだと教えられます。しかし、音響的に見ると、「あ」という母音は決して一つの固定された音ではありません。 母音の音色は、声帯で生まれた音が声道を通ることで形成されます。 この声道の形は、喉頭の位… 続きはこちら≫
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歌を歌うのに母音ってなんで重要なの?
歌唱において母音が中心的役割を果たす理由── 発話と歌唱の音響構造を比較しながら考える「良い声」の正体 歌声を聴いたとき、「この人は良い声をしている」と感じる場面は多くあります。 人は専門的な知識がなくても、歌声の魅力を直感的に判断でしています。 よく桜田は良い声、そうではない声はプロが聴くまでもないと言っています。 しかし、その“良い声”を構成している具体的な要素については、感覚で語られることが多く、科学的な裏付けが十分に共有されていない場合もあります。 音声学や歌唱における音声科学の研究を踏まえて整理していくと、歌声の印象に最も大きな影響を持つのは母音であるという構造が見えてきます。音程、強弱、ビブラート、リズム、フレーズ感など、歌唱を形づくるさまざまな要素はもちろん重要ですが、その根底にある音色(tone)を決定しているのは母音であり、母音の質が歌声全体の魅力を大きく左右しています。 歌唱における母音の役割を理解するためには、発話と歌唱の音響的な違い、さらに言語ごとの特徴やジャンルごとのスタイルを整理していく必要があります。本ブログでは、これらを専門的な観… 続きはこちら≫
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ボーカル・ウォーミングアップの科学 2 -クールダウンとは?
第2話:ウォーミングアップとクールダウンの科学的メリット 声を「温める」ことと「冷ます」ことの両輪。 ウォーミングアップは歌うための準備。一方、クールダウンは歌った後の回復のための発声です。身体の筋肉と同様に、声の使用後にも「ゆるやかに収束させるプロセス」が必要であることが、近年の音声科学で明らかになってきました。 声は筋活動・血流・粘膜の協調によって成立する精密な運動です。それゆえ、過剰な使用の後に“何もせず止める”ことは、激しい運動後にストレッチを省くことと同じくらいリスクがある。声帯粘膜や外喉頭筋群が緊張したまま睡眠に入ると、翌朝の発声立ち上がりが重くなり、音域や響きに影響を及ぼします。 本章では、クールダウンで実際に起こる生理的変化、研究による効果、そして桜田が現場で観察してきた回復プロセスを紹介します。 さらに後半では、英国Voice Care Centreなどでも注目されるサーカムラリンジャル(ボーカルマッサージ)を、クールダウンと並ぶ回復手法として位置づけ、科学的根拠と実践的意義を考察します。 クールダウンとは何か? その目… 続きはこちら≫
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ボーカル・ウォーミングアップの科学 1 -何が起こるのか?
第1話:ウォーミングアップで何が起こるのか? あなたは歌う時にウォーミングアップをしますか? 桜田ヒロキ個人的には20代の頃から、ウォーミングアップが必須でした。ウォーミングアップなしでは高い声も詰まりますし、ピッチが悪くなります。なので、個人的には若い頃から今までウォーミングアップは必須です。 中には全くウォーミングアップを必要としないシンガーもいます。ただ、傾向としては多くのシンガーが年齢を重ねる毎に徐々にウォーミングアップの重要性に気づいていくようです。 ウォーミングアップを終えた時、実際に喉頭や声帯では何が起きているのでしょうか? 多くの歌手は「声が軽くなる」「高音が出やすくなる」「響きが整う」と感じますが、それがどのような生理的変化によって起こるのかを理解している人は多くありません。 本稿では、ウォーミングアップの科学的背景を整理し、研究で示されている生理変化と音響的効果を解説します。 さらに、桜田が現場で観察してきた「声の立ち上がり」「共鳴位置」「筋の再キャリブレーション(調整)」に関する臨床的視点も交えながら、歌手にとってウォームアップが… 続きはこちら≫
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ビブラートの科学4 – ビブラートの消失と再獲得
第3章:ビブラートの消失と再獲得 ― 声の健康とリハビリの視点から ビブラートは、声が健康に働いているかどうかを示す「指標」のひとつといえます。 第1章「ビブラートと言う物理現象」ではそのメカニズムを、第2章「ビブラートのトレーニング方法」では安定した揺れを育てるトレーニング法を取り上げました。 そしてこの第3章では、ビブラートが「失われる」とき、声の内部で何が起こっているのかを整理し、その再獲得の道筋を探ります。 多くの歌手が「ビブラートがかからなくなった」「以前のような自然な揺れが戻らない」と感じるとき、そこには単純な技術的要因だけでなく、喉頭の筋緊張や粘膜の変化、さらには神経系の働きが関係していることがあります。 このような変化は、短期的な声の酷使や炎症から、慢性的な過緊張、加齢にともなう筋萎縮まで、非常に幅広い要因によって起こります。 ビブラートが生まれる仕組みを「反射」や「自動調整」として捉えると、その消失は「声の自律的な揺れ」が止まった状態だと考えることができます。 言い換えると、声帯が正しいバランスで動くためのフィードバック・ループが… 続きはこちら≫
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ビブラートの科学3 – スタイルと表現で使い分けるビブラートの技術
第3章 スタイルと表現で使い分けるビブラートの技術 前章 ビブラートのトレーニング方法で述べたように、自然なビブラートは身体の協調によって「現れる」ものです。 しかし、音楽表現の中では、その揺れをどのように“使うか”“使わないか”という選択が求められます。 ビブラートは単なるテクニックではなく、スタイルや感情の一部としてコントロールされる表現要素です。 この章では、クラシックとCCM(Contemporary Commercial Music)におけるビブラートの使われ方の違い、フレーズ末尾での変化、ミックスボイスでの安定性などを中心に、ビブラートを意図的にデザインする方法を解説します。 自然な揺れを「制御」する段階へ 前章 ビブラートのトレーニング方法でのトレーニングを経て、ビブラートが自然に発生するようになった段階では、次に「その揺れをどのように使うか」を考える必要があります。 ここで大切なのは、“自然発生したビブラートを止めたり変化させたりする”ことは、無理に揺らすよりも難しいという点です。 僕の師匠の一人、セス・リッグスもエクササ… 続きはこちら≫





