ミックスボイス一覧

  • 男性歌手必見!男声の加齢による変化とは?

    男性の声の加齢変化:掠れと高音化の科学的背景 声は年齢を最も顕著に映しだす 歌声は「楽器としての身体」の機能がそのまま現れるため、加齢の影響がきわめて明確に可聴化されます。 特に男性においては、声帯筋の萎縮、甲状軟骨の骨化、呼吸機能の低下といった解剖学的・生理学的変化が、声質と音域に直結します。 その結果として現れるのが、いわゆる「高齢男性の声」に特徴的な 掠れと基本周波数(ピッチの上昇 です。 つまり、私たちが日常で耳にする「おじいさんの声」とは、単なる老化の産物ではなく、声帯と喉頭枠組みの変化が組み合わさって生じる、科学的に説明可能な音声現象なのです。 声帯筋の萎縮と閉鎖不全 加齢男性の声で最も顕著に現れるのが、声帯閉鎖の不完全さです。 声帯筋(thyroarytenoid muscle)が萎縮し、質量が減少すると、発声時に声帯が完全に閉じなくなり、隙間から空気が漏れます。 これにより、声は掠れ、息漏れ感が強まり、声量も低下します。歌手にとってはロングフレーズの維持が難しくなり、特にレガート歌唱で表現力の低下として現れます。… 続きはこちら≫

  • 加齢と声の関係:歌手にとって避けて通れない課題を考える

    加齢と声の関係:歌手にとって避けて通れない課題(第1回 イントロダクション) はじめに―声は「年齢を映す鏡」 人の身体は年齢とともに変化していきます。顔にしわが増えたり、筋力や持久力が落ちたりするのと同じように、声もまた年齢を重ねるごとに変化します。歌手にとってそれは深刻です。なぜなら、自分の身体そのものが楽器だからです。ピアノやヴァイオリンのように外部の楽器を交換することはできません。変化を受け入れ、その中でどう表現するかを考えることこそ、歌い続けるための道なのです。 歌唱の特性―声を“作りながら”操作法を学ぶ生涯のプロセス 歌唱は、与えられた楽器をただ鳴らす行為ではありません。日々のボイストレーニングを通じて声という楽器を育てながら、その操作方法を学び続ける営みです。もし一生歌い続けるなら、自分の声の変化を観察し、そこから学び、発声の方法を常に更新し続ける必要があります。 このプロセスは一見大変に思えるかもしれません。しかし見方を変えれば、声の変化を楽しみ、学び続けられることが歌手の特権です。年齢を重ねることで深まる声の響きや質感を、新しい表現へと変えていくことは… 続きはこちら≫

  • ボーカルフライの効能とリスク 〜ボイストレーナーの視点から〜

    ボーカルフライとは何か 声帯を極端に低い振動数で鳴らし、声門閉鎖時間が長い発声をボーカルフライと呼びます。 特徴としては、低い呼気流、長い閉鎖期、粘膜波の振幅が抑制されることが挙げられます。 言語聴覚士(SLP)の領域では「声門閉鎖促通」の一手法として古くから用いられてきました。 効能:一時的に声門閉鎖を改善する Bolzanら(2008):ボーカルフライ後に粘膜波振幅が改善し、声門閉鎖も向上。 臨床報告(小規模):声帯結節や声帯溝症のリハビリに短時間使用すると、声門閉鎖が一時的に改善。 ケースシリーズ(成人5例):フライ直後に喉頭・鼻咽腔の閉鎖機能が改善。 → 一時的に「閉じ感」を思い出させるトレーニングとして有効とされています。 リスクとデメリット 長時間使用のリスク 30分間連続使用で発声しきい圧(PTP)が0.4 cmH₂O上昇(Svec, 2008)。努力感が増大し、発声負荷が高まる可能性があると報告されています。ただし、このような「30分間連続での実施」は実際のトレーニング現場ではまず行われず、研究的に負荷を観察するための条件と… 続きはこちら≫

  • シンガーのための声の衛生 — 科学と実践から考えるボイスケア

    1. 潤滑と水分補給(Hydration) 声帯は振動する粘膜組織であり、水分状態が発声効率に直結します。研究では、体内水分(systemic hydration)と声帯表面の潤滑(superficial hydration)の両方が、発声閾値圧(Phonation Threshold Pressure: PTP)を下げることが示されています。 PTPが低い=声を発する労力が少なく済む、ということです。十分に水分が保たれた声帯は柔軟に振動でき、長時間の歌唱でも負担が軽減されます。逆に脱水状態では、粘性が高まりPTPが上がり、発声が重たく、疲労や嗄声を招きやすくなります。 桜田の現場から 私のクライアント、特に女性シンガーに質問すると、ほとんど全員が水分摂取不足です。基準としては「体重(kg) × 30〜40ml」の水分摂取を心がけることが望ましい。例えば50kgの方であれば1.5〜2ℓです。日々の飲水習慣が声の質に直結するのです。 2. ボーカル衛生教育プログラムの有効性(歌手を対象と… 続きはこちら≫

  • 声の予算(Vocal Budget)— 練習負荷を科学的に管理する視点

    1. 桜田の現場から見る「声の過剰使用」 プロ志望の方にとって、連日の本番を声を嗄らさず乗りきることは最大の目標です。しかし、楽器奏者と異なり、声には練習しすぎのリスクがあります。 実際、私の生徒で声帯結節を2度手術した方がいましたが、長時間の練習が癖になり、気づけば1日10時間練習していると。これは明らかなるオーバーユースであり、即座にスケジュールを見直す必要がありました。 2. 声の予算(Vocal Budget)とは? 声も筋肉と粘膜から成る組織です。過負荷を「出費」、休息や水分を「貯蓄」ととらえ、どれだけ“使える声”を保てるかを管理するのが 声の予算です。 3. 科学的裏づけ:声のドーズ(Vocal Dose)研究 指標 説明 Phonation Time Dose 総発声時間の累積 Cycle Dose 周波数 × 発声時間 →「総振動回数」(歩数計の総歩数に相当) Distance Dose SPL(音圧レベル)などから推定した振幅 × サイクル →「声帯移動総距離」(歩数… 続きはこちら≫

  • 歌手に多い「機能性発声障害(筋緊張性発声障害)」とは?

    まずは定義から 機能性発声障害(筋緊張性発声障害)は、声帯やその周囲に器質的な異常がないのに、喉頭内外の筋肉が過度に緊張し、発声が非効率になる機能性音声障害です。 特徴的な所見としては、喉頭の挙上、仮声帯の過剰な内転、喉頭の前後圧縮などが見られます。 歌手の場合、これに伴って ・声が出しづらい ・息漏れやかすれ ・声が不安定になる ・レンジの一部が使えなくなる といった症状が出ます。 歌手に発声障害が多い理由 メタアナリシスによると、歌手の自己申告ベースで約46%が何らかの音声トラブルを経験しており、その主要な診断の一つが発声障害(MTD)です。 ジャンルを問わず起こり得ますが、特に高負荷の歌唱(ミュージカル、ポップスなど)や、長時間のリハーサル・公演スケジュールを抱える歌手でリスクが高まります。 誤診と見落としの課題 MTDは器質的な病変がないため、一般的な耳鼻咽喉科の診察(話声だけの評価)では見逃されることがあります。 専門施設でのストロボスコピーや(声帯の動きをスローで観察できる機器)歌唱課題を含む評価によって初めて診断されるケースも少なく… 続きはこちら≫

  • サーカム・ラリンジャル― 声を過緊張から解放するための科学と実践

    はじめに 歌手や歌手志望の方にとって「声の出しにくさ」や「喉の詰まり感」は日常的な課題かもしれません。 高音に差し掛かると喉が固まる、長時間の稽古後に声が重たくなる、発声時に無意識に力んでしまう…。 こうした状態の背景には、機能性発声障害(筋緊張性発声障害) や、代償的な発声パターンの習慣化が隠れていることがあります。 この問題に対して注目されているのが、サーカム・ラリンジャル・マッサージ(Circumlaryngeal Massage, CLM)、通称ボーカルマッサージです。 サーカム・ラリンジャル・マッサージとは? サーカム・ラリンジャル・マッサージは、喉頭や舌骨周囲の外喉頭筋を手技で緩める方法です。 Aronson(1990)によって臨床的に整理され、その後「機能性発声障害(筋緊張性発声障害)」の治療や、歌手の声のコンディショニングに用いられるようになりました。 主な目的 ・甲状舌骨筋や舌骨上筋群の過緊張を緩和する ・喉頭の高位化や固定化を解除し、可動性を回復させる ・代償的に作られた発声習慣をリセットする ・発声訓練の前準備として、神経‐筋ネ… 続きはこちら≫

  • ボーカルマッサージと発声訓練 ― 職業歌手に必要な“緊張解除”と“運動学習”の二段構え

    はじめに 歌手にとって「声の調子が悪い」「高音が引っかかる」「長時間歌うと喉が重く感じる」といった感覚は、決して珍しいものではありません。 その背景には、単なる疲労だけではなく、機能性発声障害(筋緊張性発声障害) や、無意識に身につけてしまった 代償的な発声パターンが隠れている事があります。 リハーサルや公演を重ねるほどに、喉周りの筋肉は「歌うための支え」ではなく「過剰な緊張」を積み上げてしまうことがあります。 ここで注目されているのが、ボーカルマッサージと発声訓練を組み合わせた二段構えのアプローチです。 1. ボーカルマッサージがもたらす効果と限界 ボーカルマッサージ=即効性がある、これは多くの歌手が体感するところです。 研究でも、ボーカルマッサージを施した直後にジッター(音の高さの震え)やシマー(音量振幅の不安定性)が減少。 HNR(ハーモニック・ノイズ比)が改善(よりツヤのある声になる) といった音響的改善が確認されています(Rezaee Rad et al., 2018)。 しかし重要なのは、基本周波数(F0=話声位)は変わらない という事実です… 続きはこちら≫

  • 変声期を迎えた少年歌手の発声障害の例

    子役の変声期に直面する現場から 変声期を迎えるミュージカルの子役のトレーニングを担当することがあります。 子役はストーリー上とても重要な役を任されることが多く、舞台では高い歌唱力が求められます。 しかし、思春期にあたる彼らは精神的にも不安定になりやすく、本人も親御さんも非常に苦労されます。 男子の変声期では、しばしば「この美しい高音を残したい」と本人・親御さんの双方が強く望みます。 しかし実際には変声期は子供の声から大人の声へ切り替わる時期であり、本来であれば低音化して成熟した声質に適応していく必要があります。 ところが「少年の声を残したい」という願望のままトレーニングを続けると、かえって発声障害に陥ることがあります。 [caption id="attachment_1743" align="aligncenter" width="170"][/caption] 以下に紹介するのは、アメリカで報告された事例のひとつです。 ケーススタディ 背景  ・変声期前からボーイソプラノとして活動し、裏声(falsetto/頭声)を多用していた。  ・変声期に入り… 続きはこちら≫

  • ツアー中に発声障害に罹患した歌手のリカバリー法は?(第3話)

    前回まで、アメリカで実際に起きた発声障害と、そのリカバリーのプロセスを紹介してきました。最終回となる今回は、現場で役立つ具体的なアドバイスをまとめてみます。 インイヤーモニターの設計術 ステージでの歌唱に大きく影響するのが、イヤモニの音作りです。 多くのアーティストは「自分の声をしっかり返して欲しい」とリクエストしますが、逆に声が大きく聞こえすぎると、発声がぶれてしまうこともあります。 実際、桜田のクライアントの中には「声を少し引っ込める設定」に変えたことでリハから本番まで安定するようになった方がいます。 注意したいのは、モニターエンジニアが聴いている音と、歌手本人が聴いている音は同じではないという点です。 アーティスト歌っている時、常に「自分の生声」も聴いており、さらに生声はイヤモニの音に干渉します。 そのため、エンジニアの調整だけで完結せず、本人の感覚とのすり合わせが不可欠です。 「サンドイッチ練習」で声を軽く保つ 本番直前におすすめなのが「サンドイッチ練習」。 SOVT(ストロー発声など)→歌唱→SOVTという流れで行い、軽やかな発声感覚を思い… 続きはこちら≫

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