ボーカルマッサージ一覧

  • 舌骨とボーカルマッサージ – 舌骨サーフ(Hyoid Surf)

    はじめに 歌っているときに「喉が詰まる」「高音で引っかかる」「声が重たい」と感じることはありませんか。 その原因のひとつが、舌骨周囲の筋群に生じる過緊張です。 舌骨は小さな骨ですが、顎・舌・喉頭をつなぐ重要な役割を持っています。ここに力みが生じると発声全体に大きな影響が広がり、機能性発声障害(MTD)とも関連して症状が強くなることがあります。 この繊細な部位を解放するための手技のひとつが、舌骨サーフ(Hyoid Surf)です。 舌骨とは? 舌骨は首の中央付近、下顎のすぐ下に位置するU字型の小さな骨です。 人体で唯一、他の骨と直接関節を持たず、筋肉と靭帯だけで支えられています。 舌を動かす舌骨上筋群(顎舌骨筋・顎二腹筋・舌骨舌筋など) 喉頭を支える舌骨下筋群(胸骨舌骨筋・肩甲舌骨筋・甲状舌骨筋など) これらの筋が舌骨に付着し、舌・顎・喉頭をつなぐ要の役割を果たしています。 舌骨周囲筋が固まるリスク 舌骨周囲の筋肉が固まると、歌手にとって深刻な問題が起こります。 ・喉頭が高い位置に固定され、高音が詰まりやすくな… 続きはこちら≫

  • 歌手に多い「機能性発声障害(筋緊張性発声障害)」とは?

    まずは定義から 機能性発声障害(筋緊張性発声障害)は、声帯やその周囲に器質的な異常がないのに、喉頭内外の筋肉が過度に緊張し、発声が非効率になる機能性音声障害です。 特徴的な所見としては、喉頭の挙上、仮声帯の過剰な内転、喉頭の前後圧縮などが見られます。 歌手の場合、これに伴って ・声が出しづらい ・息漏れやかすれ ・声が不安定になる ・レンジの一部が使えなくなる といった症状が出ます。 歌手に発声障害が多い理由 メタアナリシスによると、歌手の自己申告ベースで約46%が何らかの音声トラブルを経験しており、その主要な診断の一つが発声障害(MTD)です。 ジャンルを問わず起こり得ますが、特に高負荷の歌唱(ミュージカル、ポップスなど)や、長時間のリハーサル・公演スケジュールを抱える歌手でリスクが高まります。 誤診と見落としの課題 MTDは器質的な病変がないため、一般的な耳鼻咽喉科の診察(話声だけの評価)では見逃されることがあります。 専門施設でのストロボスコピーや(声帯の動きをスローで観察できる機器)歌唱課題を含む評価によって初めて診断されるケースも少なく… 続きはこちら≫

  • サーカム・ラリンジャル― 声を過緊張から解放するための科学と実践

    はじめに 歌手や歌手志望の方にとって「声の出しにくさ」や「喉の詰まり感」は日常的な課題かもしれません。 高音に差し掛かると喉が固まる、長時間の稽古後に声が重たくなる、発声時に無意識に力んでしまう…。 こうした状態の背景には、機能性発声障害(筋緊張性発声障害) や、代償的な発声パターンの習慣化が隠れていることがあります。 この問題に対して注目されているのが、サーカム・ラリンジャル・マッサージ(Circumlaryngeal Massage, CLM)、通称ボーカルマッサージです。 サーカム・ラリンジャル・マッサージとは? サーカム・ラリンジャル・マッサージは、喉頭や舌骨周囲の外喉頭筋を手技で緩める方法です。 Aronson(1990)によって臨床的に整理され、その後「機能性発声障害(筋緊張性発声障害)」の治療や、歌手の声のコンディショニングに用いられるようになりました。 主な目的 ・甲状舌骨筋や舌骨上筋群の過緊張を緩和する ・喉頭の高位化や固定化を解除し、可動性を回復させる ・代償的に作られた発声習慣をリセットする ・発声訓練の前準備として、神経‐筋ネ… 続きはこちら≫

  • ボーカルマッサージと発声訓練 ― 職業歌手に必要な“緊張解除”と“運動学習”の二段構え

    はじめに 歌手にとって「声の調子が悪い」「高音が引っかかる」「長時間歌うと喉が重く感じる」といった感覚は、決して珍しいものではありません。 その背景には、単なる疲労だけではなく、機能性発声障害(筋緊張性発声障害) や、無意識に身につけてしまった 代償的な発声パターンが隠れている事があります。 リハーサルや公演を重ねるほどに、喉周りの筋肉は「歌うための支え」ではなく「過剰な緊張」を積み上げてしまうことがあります。 ここで注目されているのが、ボーカルマッサージと発声訓練を組み合わせた二段構えのアプローチです。 1. ボーカルマッサージがもたらす効果と限界 ボーカルマッサージ=即効性がある、これは多くの歌手が体感するところです。 研究でも、ボーカルマッサージを施した直後にジッター(音の高さの震え)やシマー(音量振幅の不安定性)が減少。 HNR(ハーモニック・ノイズ比)が改善(よりツヤのある声になる) といった音響的改善が確認されています(Rezaee Rad et al., 2018)。 しかし重要なのは、基本周波数(F0=話声位)は変わらない という事実です… 続きはこちら≫

  • 変声期を迎えた少年歌手の発声障害の例

    子役の変声期に直面する現場から 変声期を迎えるミュージカルの子役のトレーニングを担当することがあります。 子役はストーリー上とても重要な役を任されることが多く、舞台では高い歌唱力が求められます。 しかし、思春期にあたる彼らは精神的にも不安定になりやすく、本人も親御さんも非常に苦労されます。 男子の変声期では、しばしば「この美しい高音を残したい」と本人・親御さんの双方が強く望みます。 しかし実際には変声期は子供の声から大人の声へ切り替わる時期であり、本来であれば低音化して成熟した声質に適応していく必要があります。 ところが「少年の声を残したい」という願望のままトレーニングを続けると、かえって発声障害に陥ることがあります。 [caption id="attachment_1743" align="aligncenter" width="170"][/caption] 以下に紹介するのは、アメリカで報告された事例のひとつです。 ケーススタディ 背景  ・変声期前からボーイソプラノとして活動し、裏声(falsetto/頭声)を多用していた。  ・変声期に入り… 続きはこちら≫

  • ツアー中に発声障害に罹患したロック歌手のケース(第2話)

    前回は、ツアー中に代償的な発声が固定化してしまったロック歌手のケースを紹介しました。 今回は、実際に行われた治療とトレーニングのプロセス、そして本人がどのように感じたのかを見ていきます。 初期の対応 最初の段階で大切なのは「声をすぐにリセットして良い状態に持って行く事」です。 歌手はステージを止めることが難しいため、短時間で効果を感じられる介入が優先されました。 ・喉頭マニュアルセラピー:首や喉周囲の筋肉を直接ほぐし、過剰な緊張を緩める マニュアルセラピーについては詳しくはこちら ・ストロー発声(SOVT):声帯への負担を減らし、効率的な振動を取り戻す ・インイヤーモニターの調整:声を無理に張り上げなくても聞こえる環境を整える 歌手はこの段階で「喉の締め付けが少し和らいだ」「高音が少し楽に出る」と語っており、即効性のある変化に大きな安心感を覚えていました。 中期のトレーニング 次のステップは、代償的な発声を少しずつ置き換える作業です。 レゾナント系発声(響きを強化する):軽く響きを伴った声を思い出す → 言語聴覚士がよく行う「レゾナント… 続きはこちら≫

  • ツアー中に機能性発声障害に罹患したロック歌手のケース(第1話)

    アーティストは非常に過酷な環境で歌唱を要求されています。 特に売れている時期や、売り出し時期には、一般の仕事に例えるなら「ブラック企業に勤めている状況で歌うことを求められる」ようなものです。 休息が不十分なままステージが続き、さらにメディア露出や移動も重なることで、声は常に限界ギリギリに追い込まれます。 今回は3編に渡って、アメリカで実際に発声障害に陥ったアーティストの診断からリカバリーまでを追ってみようと思います。 ロックバンドのメインボーカル ・全国ツアー中、連日90〜120分のステージ ・サウンドチェック、移動、インタビューで休息不足 ・インイヤーモニターの返りが不十分で、つい声を張ってしまう このような状況は、ツアーでは珍しいことではありません。限られたリハーサル時間や会場ごとの音響の違いが積み重なり、どうしても負担が増してしまうのです。 発症経緯 ・初週のステージから声枯れが出始める ・高音部を無理に押し出すような発声が増える ・苦しい発声を繰り返すうちに「代償的な発声」が固定化 ・声が出にくい → さらに力む → さらに悪化、という悪循… 続きはこちら≫

  • 歌手の機能性発声障害(MTD)と代償発声の落とし穴

    歌手が声の不調を感じたとき、その原因を「筋肉の疲労」だと考える方は多いでしょう。確かに筋肉疲労は要因の一つですが、それだけではありません。 過酷な本番や稽古によって“代償的な発声”が習慣化し、機能性発声障害(筋緊張性発声障害)に発展するケースが少なくないのです。 代償発声が招く二次性MTD MTDには大きく分けて**一次性(Primary)と二次性(Secondary)**があります。 一次性は明らかな器質的異常がないのに筋緊張が起こるタイプ。 二次性は、声帯や周辺機能の異常・負荷に対して、喉頭や首肩の筋肉を過剰に使って“代償”することで固定化してしまうタイプです。 例えば… ・高音を出すときに喉頭を強く引き上げる ・声量を出そうとして仮声帯を締める ・舌や首周りの筋肉を過剰に動員する こうした代償動作は一時的には音を出せても、結果的に喉周辺の緊張を慢性化させ、声の質や持久力を低下させます。 本番・稽古が引き金になる理由 ・長時間のリハーサルや連日の本番 ・精神的プレッシャーによる無意識の力み ・怪我や一時的な声帯不調をかばうための無理な発声… 続きはこちら≫

  • 歌手のおかれる環境と医療現場のギャップから生まれる、機能性発声障害(MTD)の難しさ

    歌手特有の声の世界 歌手の声は単なる「音声」ではなく、芸術表現そのものです。 発声の細部には、声区の移行、音色の変化、ブレスやビブラートのニュアンスなど、一般の話し声とは大きく異なる複雑な要素が絡み合っています。 しかし、こうした歌唱の特殊性や芸術性を理解することは、必ずしも医療従事者にとって容易ではありません。 MTDの誤診リスク 機能性発声障害(筋緊張性発声障害)は、器質的な損傷がないにもかかわらず、声帯周辺の筋肉の過緊張によって声の出しにくさや質の低下を招く機能性音声障害です。 プロ歌手では、特定の音域だけ出しにくい、長時間歌うとコントロールが効かなくなる、といった症状が現れることがあります。 問題は、これらの症状が「歌唱技術の不足」や「使いすぎによる一時的な疲れ」と誤解されやすいこと。 話声だけを基準に診断すると、歌唱中にのみ現れる微妙な筋緊張や声の破綻を見逃してしまい、診断や治療が遅れることも少なくありません。 専門評価の必要性 MTDを正確に診断するには、以下のような専門的アプローチが必要です。 ストロボスコピーによる声帯振動の観察 歌唱… 続きはこちら≫

  • ボーカルマッサージ 顎の筋肉の動きについて

    ボーカルマッサージ/ボーカル・マニュアルセラピーの重要な施術に顎へのアプローチがあります。 顎は声道の中でも特にコントロールが重要な部位になります。 (外側からの目視が出来るので、意識的にコントロールしやすい部位でもあります。) それでは顎が充分に開かないと、どのような弊害が起こるのでしょうか? 顎が開かない事による歌への弊害 ・高音部で声道を短くする事が出来ないため、高音での共鳴が阻害される ・高音部で声道を短くする事が出来ないため、代わりに喉頭を大きく引き上げる →とても苦しいです ・声色が鈍く聞こえる →良い声と認識され辛い ・高音部で顎を上げるような動きをしてまう →とても苦しいです これらの事が起こらないようにするために、顎の施術を行います。 逆に顎が自由に開閉出来ると、このようなメリットが得られます。 顎を適切に開く事が出来るメリット ・高音域での共鳴が最適化され、筋力的な発声に頼らなくて済む →楽に発声できます。 ・喉頭を過剰に持ち上げる必要がなくなるため、リラックスした発声を行える ・適度に共鳴周波数を上げる事により、明瞭かつ… 続きはこちら≫

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