ボーカルマッサージ/ボーカル・マニュアルセラピーの重要な施術に顎へのアプローチがあります。
顎は声道の中でも特にコントロールが重要な部位になります。
(外側からの目視が出来るので、意識的にコントロールしやすい部位でもあります。)
それでは顎が充分に開かないと、どのような弊害が起こるのでしょうか?
顎が開かない事による歌への弊害
・高音部で声道を短くする事が出来ないため、高音での共鳴が阻害される
・高音部で声道を短くする事が出来ないため、代わりに喉頭を大きく引き上げる →とても苦しいです
・声色が鈍く聞こえる →良い声と認識され辛い
・高音部で顎を上げるような動きをしてまう →とても苦しいです
これらの事が起こらないようにするために、顎の施術を行います。
逆に顎が自由に開閉出来ると、このようなメリットが得られます。
顎を適切に開く事が出来るメリット
・高音域での共鳴が最適化され、筋力的な発声に頼らなくて済む →楽に発声できます。
・喉頭を過剰に持ち上げる必要がなくなるため、リラックスした発声を行える
・適度に共鳴周波数を上げる事により、明瞭かつ「良い声」に聞こえるようになる
・高音部で顎を上げる必要がなくなる →楽に発声できます。
顎の動きが分かりやすい動画をご覧下さい
0:09~0:17
顎の動きです。
Articular Disc→
顎の動きをスムーズにするためのディスクだそうですが、これが前方にズレこんでしまい、他の部位を傷つけてしまう事により起こるのが顎関節症の最も多い原因だそうです。
0:19~0:23
咬筋(Masseter Muscle) →
ものを噛むための筋肉。非常に力が強い。
0:24~0:33
側頭筋(temporalis) →
ものを噛む。
かなり頭の広範囲に及びます。
側頭を手で沿わせながら、歯を噛み合わせると頭のどこまで側頭筋が及んでいるのかが分かります。
咬筋と連動して動く。
0:33~0:40
外側翼突筋(Lateral Pterygoid) →
口を開く。下顎を前方に突き出す。下顎骨を側方に動かす。
この他に内側翼突筋があり、これは逆に下顎を引き上げる。下顎を側方に動かすと言う働きがあります。
外側翼突筋は咀嚼筋の中で唯一口を開ける働きをする筋肉です。
口を開けるには舌骨上筋群の補助を受けます。
開口をするために必要な施術について
ボーカルマッサージの大きな目的は、過度な咀嚼筋の働きを抑制する事、そして開口をするための筋肉の活性化になります。
例えば、高音部で口を開けようとしたところ、過緊張の症状により側頭筋や咬筋が過剰に働こうとします。
これらの筋肉は口を閉じるための動作をする筋肉ですので、口を開けようとする動作と矛盾する動きになります。
これにより緊張vs緊張の構図が出来上がってしまい、歌い手としては非常に苦しい状態になります。
咀嚼筋の活動を抑制した後、発声練習を行うと、
1 不必要な緊張が取れる。
2 口を無理なく大きく開けられる。
これにより、
・ 明瞭な声の習得。
・ リラックスした発声の習得。
・ ベルティング発声の習得。
に役立つと考えられます。
驚く事に、バリトン(男声の低音声種)が顎の施術のみを行ったところ、ハイAまで楽々当てられるようになりました。
クライアント様と僕で目を見開いて「何今の!?」ってなった事があります。〔笑)
開口がうまくいかないために高音域が制限されたり、欲しい声色が手に入らない方には効果を発揮する事が多いと考えられます。
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この記事を書いた人
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セス・リッグス Speech Level Singing公認インストラクター日本人最高位レベル3.5(2008年1月〜2013年12月)
米Vocology In Practice認定インストラクター
アーティスト、俳優、プロアマ問わず年間およそ3000レッスン(のべレッスン数は裕に30000回を超える)を行う超人気ボイストレーナー。
アメリカ、韓国など国内外を問わず活躍中。
所属・参加学会
Speech Level Singing international
Vocology in Practice
International Voice Teacher Of Mix
The Fall Voice Conference
Singing Voice Science Workshop
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