呼吸器の変化
肺の容量の低下
加齢により肺の容量が低下します。
肺圧が下がる事により、音量の低下。
肺の容量の低下により長いフレーズを一息で歌いづらくなります。
肺の柔軟性の低下
肺の柔軟性の低下により呼気、吸気ともにスムーズに行う事が難しくなります。
内肋間筋、横隔膜の筋力低下
空気を吐き出す時に使う内肋間筋が弱くなります。
空気を取り込む際に使う横隔膜の筋力が低下します。
これにより呼気、吸気ともに下がると考えられます。
筋肉の変化
呼吸のプロセスを描いたグラフ。加齢により使えない空気の容量が増えます。
筋肉の質量の低下
加齢により前進の筋肉が減ります。
声帯は筋肉の占める割合が大きいため、それが減る事により音量の低下、高音化が考えられます。
姿勢の変化
筋力の低下により、姿勢に変化が起こります。
前屈みになったり、背中が曲がるなど、歌にとって好ましくない姿勢になりやすくなります。
柔軟性の低下
加齢により筋肉の柔軟性が失われます。
声帯そのもののしなやかな動きに影響は出るでしょうし、それは呼吸器を支える筋肉にも起こります。
舌骨から肩甲骨まで伸びる肩甲舌骨筋
神経系統の変化
神経筋の協調性の変化
加齢により筋肉の協調運動に変化が起こります。
声は主に足より上の筋肉の協調運動とも言えますので、声に必要な筋肉の連動性に衰えが起こると考えられます。
反応速度の低下
反応速度が遅れる事により、素早い声の動き(ビブラートを含む)が難しくなります。
またリフやコロラトゥーラ等の瞬発力の問われる歌唱にも影響があると考えられます。
いかがでしたか?
前回から引き続き加齢における変化を書いてきました。
ただしこれらの変化も必ずしも悪いことばかりとも言えず、例えば反応速度の低下は楽曲の選別を誤らなければ「味のある歌い方」になります。
声帯の柔軟性の低下による嗄声も「味のある声」に変化しているとも言えます。
歌は芸術ですので、変化を人生の時々に合わせて身体や声の使い方を適合させれば、変化をよりポジティヴな物として捉える事が出来るでしょう。
もちろん!これらの身体的変化は遅らせたり軽減させる事も出来ます!
次回からはAgeless Voice(歳を取りにくい声)の方法を書いていきます。
この記事を書いた人

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米国Speech Level Singingにてアジア圏最高位レベル3.5(最高レベル5)を取得。2008〜2013年は教育管理ディレクターとして北アジアを統括。日本人唯一のインストラクターとしてデイブ・ストラウド氏(元SLS CEO)主宰のロサンゼルス合宿に抜擢。韓国ソウルやプサンでもセミナーを開催し、国際的に活動。
科学的根拠を重視し、英国Voice Care Centreでボーカルマッサージライセンスを取得。2022–2024年にニューヨーク大学Certificate in Vocology修了、Vocologistの資格を取得。
日本では「ハリウッド式ボイストレーニング」を提唱。科学と現場経験を融合させた独自メソッド。年間2,500回以上、延べ40,000回超のレッスン実績。指導した声は2,000名以上。
倖田來未、EXILE TRIBE、w-inds.などの全国ツアー帯同。舞台『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』主演・岩本照のトレーニング担当。
歌手の発声障害からの復帰支援。医療専門家との連携による、健康と芸術性を両立させるトレーニング。
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