甲状舌骨膜(thyrohyoid membrane)へのアプローチ

ボーカルマッサージ/ボーカル・マニュアルセラピーで喉頭周辺へのアプローチで重要な部位の1つを紹介します。
甲状舌骨膜(thyrohyoid membrane)と言われる部位です。

甲状舌骨膜とは?

舌骨と甲状軟骨(のどぼとけ)の間をつなぐ組織です。

専門書では下記のような記載がありました。
「舌骨下面と甲状軟骨上縁の間に張る弾性繊維に富む結合組織性の膜で、以下のような特徴がある。
正中部は両側縁は歩く肥厚し、正中甲状舌骨靱帯、甲状舌骨靱帯と呼ばれる。
左右に小さな穴があり、上喉頭動脈、上喉頭静脈、上喉頭神経を通す」とあります。

筋肉ではなく、コラーゲンを多く含む靱帯で形成されていると言う特徴があります。
甲状舌骨膜の穴から通る、上喉頭神経は音程の生成に必須な輪状甲状筋を支配します。
上喉頭動脈は甲状舌骨筋、粘膜、喉頭の腺に栄養を供給します。

つまり、歌唱や会話の技術に不可欠な筋肉をコントロールする神経が通っており、声帯を含む喉頭の内側の栄養を供給するのに重要な部位と言えます。

周辺の筋肉の緊張により幅が狭い事がある

喉頭の周辺の筋肉が緊張すると、一般的には「喉が上がる」状態になります。
甲状舌骨膜の周辺の緊張により、舌骨と甲状軟骨の幅が狭くなる事があると考えられます。
それにより神経や血管を圧迫するのであれば、声にとって影響を及ぼす可能性はありそうですね。

また甲状舌骨膜の幅が狭いと、緊張により喉頭が自在に動けなくなる事が考えられますし、喉頭が常に高い状態になり声道を短くしてしまいます。
この部分は、声色の変化が求められる声優さんやものまねアーティストの方は、かなりの確率で緊張により狭くなっています。

甲状舌骨膜の幅はかなり個体差がある部位と考えれる

それなりの歌手の喉頭を触らせていただいた感想は「毎回、人体の個体差にびっくりさせられる」事です。

喉頭が鋭角的で外から目視しやすい喉
逆に鈍角的で外から目視しにくい喉
大きな喉、ちいさな喉
首の上方についている喉、下方についている喉
舌骨の幅が大きい、小さい
舌骨が細い、分厚い
等言い出したらキリがない程です。

ですので、甲状舌骨膜の幅もかなり個体差があり、希に舌骨と甲状軟骨にベッタリとくっつくぐらい狭い場合もあります。

甲状舌骨膜の拡げる方法

クライアント様にあくびをしてもらい、喉頭を下方に引き下げるお手伝いをして拡げたり、施術者の指で優しく拡げたりする事もあります。

ただし、舌骨や甲状軟骨は力の方向に寄っては非常に弱い部位です。
この施術だけは専門家に習った事がなければ絶対におすすめしません。
特に高齢者の軟骨は既に骨に変わっており、柔軟性がとても低く、手で触れる際にはとても気をつける必要があります。

この記事を読んで喉を触り、怪我をされても一切の責任はとれませんので、十分にお気をつけください。

ボーカルマッサージ/マニュアルセラピーはこちらからどうぞ!

この記事を書いた人

桜田ヒロキ
桜田ヒロキ
米国Speech Level Singingにてアジア圏最高位レベル3.5(最高レベル5)を取得。2008〜2013年は教育管理ディレクターとして北アジアを統括。日本人唯一のインストラクターとしてデイブ・ストラウド氏(元SLS CEO)主宰のロサンゼルス合宿に抜擢。韓国ソウルやプサンでもセミナーを開催し、国際的に活動。
科学的根拠を重視し、英国Voice Care Centreでボーカルマッサージライセンスを取得。2022–2024年にニューヨーク大学Certificate in Vocology修了、Vocologistの資格を取得。
日本では「ハリウッド式ボイストレーニング」を提唱。科学と現場経験を融合させた独自メソッド。年間2,500回以上、延べ40,000回超のレッスン実績。指導した声は2,000名以上。
倖田來未、EXILE TRIBE、w-inds.などの全国ツアー帯同。舞台『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』主演・岩本照のトレーニング担当。
歌手の発声障害からの復帰支援。医療専門家との連携による、健康と芸術性を両立させるトレーニング。

RECOMMEND
関連動画

声と意識の結びつけ方。その重要性を解説します。

あなたは声と意識の結び付けが上手に出来て、インテリジェントに練習が出来ていますか?
声のトレーニングは筋肥大を目指す筋力トレーニングとは異なり、頭で想像→実際に発声→理想と実際に出た声の誤差チェックが重要になります。

WATCH MORE

レッスンに来た時の歌声のチェックポイントを教えます

桜田ヒロキはボイストレーナー仲間の間でも超細かく歌声を聞き取り、フィードバック出来ると定評いただいています

WATCH MORE

声楽からミュージカル歌手の歌い方へ変えたい!

声楽を学んできたが、CCM(コマーシャル・コンテンポラリー音楽)の発声方法も習得したいクライアント様のレッスン。

WATCH MORE

高い音域が連続する事を想定したボイトレ・メニューを解説!

課題曲とエクササイズの難易度を合わせる事は非常に大事です。ここでは高い音域が連続する事を想定したトレーニング・メニューを提案します!

WATCH MORE

トレーニングで習得したミックスボイスを実際の曲で使えるようにしたい!

ボイストレーニングに通って高い声も力強い声も身についてきた。では実際の曲でそれをより有効に使う方法を知りたいクライアント様のケースを解説します。

WATCH MORE

歌い出すと声が震えてしまう!改善したい。

声帯炎を患った後「声帯炎は治ったけど歌う時に声が震えるようになった」と言うクライアント様のケースを解説します。

WATCH MORE
レッスンを予約する