- 2021.03.12
- 声の健康法
桜田ヒロキのレッスンには歌唱力の向上を望む歌手の方だけではなく、発声障害の方の発声機能向上や声帯結節の術後の発声改善、再発の予防としてレッスンに通われる方も多くいます。
今回は声帯結節を癖にしないために考えられる方法をご紹介しようと思います。
発声訓練開始は医師の承諾の元
必ずお医者様が「発声訓練を行って良い」との許可が出てからの発声訓練になります。
声帯結節の手術後など、声帯の傷が充分に回復していない。話し声がまともに出せないと言う状態では訓練は開始出来ません。
声帯結節って何?
声帯結節は声の使い過ぎにより出来る声帯に出来るタコと考えれば良いと思います。
この「声の使い過ぎ」と言うのは、悪い発声であれば短期間で現れる可能性が高いと言われていますし、
仮に良い発声であったとしても、長時間、長期間にわたる声の乱用はリスクになると考えられます。
声帯の前側、3分の1に良く出来ると言われています。
なんで声帯の前側、3分の1に出来る?
声帯の前側、1/3は甲状披裂筋の影響を最も受けやすいからではないかと考えられます。
甲状披裂筋に電気を当て、その部位だけを動かすと言う実験の写真がこちらです。
甲状披裂筋を使用していない時
甲状披裂筋を使用している時
※どちらも写真の上側が前側になります
この写真を見ると、甲状披裂筋が使われている時に声帯の前面側が合わさっているのが確認出来ます。
従って、甲状披裂筋が最も良く使われる地声発声時の影響により声帯結節ができてしまう事が多いのではないかと考えられます。
ちなみに女性の方が声帯結節の罹患率が高いらしく、無理に太い地声を作ろうとすると、そもそも男性よりも薄い声帯を無理に分厚くする必要があるため声帯の前1/3を強く硬化させるのが原因ではないか?と考えられそうです。
声帯結節の罹患率の最も高い職種が、女性の保育士さん、小学校低学年の担任の女性教師。だそうです。
大きな声で怒鳴っている時間が長そうな職種ですよね。。。
どんな発声訓練が効果があるの?
FalsettoToChest from 桜田ヒロキ on Vimeo.
ケースバイケースですが、結節が声帯の前側、1/3に出来ているのであれば、甲状披裂筋を過度に働かせない訓練方法が考えられます。
つまり、甲状披裂筋をほとんど働かせない裏声発声から優しく地声に落とす訓練。
これを念入りにじっくり行います。
最初のうちは、裏声でうすく引き延ばされた状態から、地声に落とすとガクッと大きな変化が行ってしまいます。
それを辛抱強く、ゆったりと滑らかに地声に下降させる訓練を行います。
この動画で言うと声帯が縮んでいる状態が甲状披裂筋が強く働いている状態です。
甲状披裂筋の働きが穏やかな、高音発声(特に裏声)から地声発声にゆったりと切り替える練習が効果的な方法と考えられます。
もう1つ、SOVT(セミ・オクルーディッド・ヴォーカル・トレーニング)も効果的だと思います。
ストローを使った発声は、声帯の振動効率を上げる効果がありますので、
SOVTで発声効率を上げる→通常の発声練習を行う
と言った事を交互に行う事で徐々に良い発声状態を体が記憶すると考えられます。
まれにある披裂軟骨の閉じが弱い事が原因のケースもありそうです
稀にお医者様から「声帯の前側ばかりが強く当たっているが、声帯の後ろ側(披裂軟骨側)が充分に閉じていない」と指摘をされる事もあります。
この場合、声帯の後ろ側の閉じが弱いため、代替機能として甲状披裂筋を強く使ってしまっている可能性が考えられます。
その場合、披裂軟骨の閉じが非常に強くなる事が確認されているヴォーカル・フライと言う発声法を使っての訓練も方法として存在します。
具体的な練習方法は動画で見ると分かりやすいと思いますので、掲載しておきますね!
疾患を伴う発声の改善はお医者様の意見を伺いながら、このエクササイズを試してみよう!と言う手順になる事が多いです。
その場合、声に関する論文や、筋肉の動きや物理学的な思考。
そしてそれを組み合わせる発想力がとても大事に感じます。
この記事を書いた人

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米国Speech Level Singingにてアジア圏最高位レベル3.5(最高レベル5)を取得。2008〜2013年は教育管理ディレクターとして北アジアを統括。日本人唯一のインストラクターとしてデイブ・ストラウド氏(元SLS CEO)主宰のロサンゼルス合宿に抜擢。韓国ソウルやプサンでもセミナーを開催し、国際的に活動。
科学的根拠を重視し、英国Voice Care Centreでボーカルマッサージライセンスを取得。2022–2024年にニューヨーク大学Certificate in Vocology修了、Vocologistの資格を取得。
日本では「ハリウッド式ボイストレーニング」を提唱。科学と現場経験を融合させた独自メソッド。年間2,500回以上、延べ40,000回超のレッスン実績。指導した声は2,000名以上。
倖田來未、EXILE TRIBE、w-inds.などの全国ツアー帯同。舞台『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』主演・岩本照のトレーニング担当。
歌手の発声障害からの復帰支援。医療専門家との連携による、健康と芸術性を両立させるトレーニング。
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