声にとって適切な練習時間や本番の時間って?

コロナ渦に入ってから、2時間のライブや舞台を昼公演、夜公演と2公演行う事がわりと普通になりました。
これによりアーティストの声のケアや、安全な発声法の需要が一気に高まったように感じます。
実際、アーティストから「昼、夜の2回公演に耐えられる声にして欲しい」と発注を受ける事もあります。

この「長時間歌う」と言う事に関して言うと、よくクライアント様からされる質問の「1日の練習は何時間くらいにすれば良いですか?」にも答えられると思います。
一部のボイストレーナーは「正しい発声をしていれば何時間でも歌える」と言う方もいますが、果たして本当にそうでしょうか?

声の疲労度の簡単な算出の仕方

簡単な声の疲労度の算出の仕方があります。
それはこちらです。

声の出し方 × 声の音量 × 時間 =疲労の蓄積ポイント

声の出し方
喉の筋肉に過度な緊張を強いる発声、怒鳴り声やささやき声は声の浪費に繋がります。
出し方の工夫や、出し方の矯正が必要になります。
ボイストレーナーが行うのはこの声の出し方を矯正し、効率的な出し方にする事になります。

声の音量
大きな声での発声は、声のシステムに筋疲労を招きます。
大きな声には、大きな声門下圧が求められるため、良い発声であろうと大きな声での発声は声を疲労させます。

発声の時間
練習や本番の時間は、声の疲労に直結します。
ですので、本番など時間的に縛られている場合は他の2つ(声の出し方。声の音量 。)をコントロールする必要があります。

この事からわかる効果的な練習方法は?

1 ボイストレーニング
発声練習(ボイストレーニング)においては、徹底的に発声の効率化を図るようにする事。
それを身体に学習させる事を心がける必要があります。

2 練習の順番の工夫
ファルセットをつかった練習、本人やトレーナーの評価での「中くらいの音量」での練習を中心に。
その後に短時間で大きな声の練習。
楽曲でも高く、大きなパートは後に残しておく。

3 練習時間の設定
わりと練習をやり過ぎてしまいがちの人は練習時間を予め設定しておきましょう。
自身の経験上、声が疲れ出す時間が2時間だとしたら、それを目安に少し短くすると良いと思います。
日々の練習時間と言う意味では、2時間まで。週に1,2回は声をあまり使わない日を設定する。

休息日の設定 ボーカルマッサージ
休息日の設定や、十分な睡眠時間は声にとって、とても重要です。
疲労が残っている状態で、発声法が大きく関与する高難易度のタスクをしてもうまくいかない事は多いです。
発声に関わる筋肉が凝ってしまったり、疲労物質が貯まってしまっている場合は休息を置いてから練習に取り組んだ方がうまく行く事が多いです。


2023年の倖田來未さんのツアーから、昼公演と夜公演の合間に喉頭や舌骨周辺を中心に5〜10分程度のストレッチを入れたところ、夜公演の発声が安定した様に感じました。
ボーカルマッサージの導入はシンガーや俳優にとって、今後大きな助けになってくる可能性は高そうですね!

この記事を書いた人

桜田ヒロキ
桜田ヒロキ
セス・リッグス Speech Level Singing公認インストラクター日本人最高位レベル3.5(2008年1月〜2013年12月)
米Vocology In Practice認定インストラクター

アーティスト、俳優、プロアマ問わず年間およそ3000レッスン(のべレッスン数は裕に30000回を超える)を行う超人気ボイストレーナー。
アメリカ、韓国など国内外を問わず活躍中。

所属・参加学会
Speech Level Singing international
Vocology in Practice
International Voice Teacher Of Mix
The Fall Voice Conference
Singing Voice Science Workshop

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